アサドが消えても混乱続く...シリア国民が考える、復興に必要なもの

THE AFTERMATH OF A TRAGEDY

2025年3月21日(金)18時50分
伊藤めぐみ(ジャーナリスト)
解放後、シリア各地で見られるようになった行方不明者を捜す写真(ダマスカス)

解放後、シリア各地で見られるようになった行方不明者を捜す写真(ダマスカス) PHOTOGRAPHS BY MEGUMI ITO

<拷問の恐怖で国を支配したアサド政権が崩壊して3カ月。各地で衝突も続く中、国民は何を感じているのか>

シリアの首都ダマスカスの街は街路樹がよく育ち、家の庭には草木や花がのぞく。そんな緑あふれる地区に、その施設はひっそりとたたずんでいた。門の先に駐車場が広がり、その向かいにコの字形の集合住宅のような建物が続いている。しかし、この場所の本当の姿は、穏やかな日常とは正反対だ。ここは、バシャル・アサド大統領の政権下で政治活動を理由に捕まった人たちが、死に至る拷問を受けていた軍事情報部の収容所だった。

昨年12月8日、アサド政権が崩壊した。2011年から14年近く内戦が続いたシリアのアサド政権は、化学兵器の使用のため国連で制裁決議案が出される世界でも最悪の独裁国家の1つだった。ここ数年はシリアの広い地域を支配していたが、政権を支えていたロシアやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの勢力が弱まり、反体制派勢力が一気に攻勢をかけると、あっさり崩壊した。


2月24、25日に地域や宗教団体の代表が参加し、新しい国家の在り方を議論する「国民対話会議」が開催され、3月10日には衝突していたクルド人武装勢力を国家機関に統合する合意もできた。だが3月初めには、沿岸部ラタキア郊外などでアサド前政権を支持する武装勢力と暫定政権の治安部隊が衝突し、人権団体によれば、民間人を含む1500人以上が死亡した。

アサド政権とは一体何だったのか。新しく出発したシリアでは一体何が起き、人々は何を求めているのか。政権崩壊後のシリアで12月下旬から1月にわたって取材した(本文では取材対象者の安全を考慮し匿名)。

日本
【イベント】国税庁が浅草で「伝統的酒造り」ユネスコ無形文化遺産登録1周年記念イベントを開催。インバウンド客も魅了し、試飲体験も盛況!
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、主力株の一角軟調

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平の進展期待 ゼレンスキー

ワールド

中国財政政策、来年さらに積極的に 内需拡大と技術革

ワールド

北朝鮮の金総書記、巡航ミサイル発射訓練を監督=KC
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中