コラム

トランプのCIA批判派封じは、陰謀論のQAnonが待つ「一大決戦(ストーム)」の始まりか?

2018年08月21日(火)15時00分

・アメリカは民主主義国家でありながら、実際には大企業と癒着した政治家、CIAやFBIなどの情報機関、メディアなど少数のエリートによって支配されてきた(彼らはこれをディープ・ステイト、「奥底にある国家」と呼ぶ)、

・歴代大統領も「ディープ・ステイト」に操られてきたが、例外的にこれに抗おうとしたジョン・F・ケネディは暗殺され、ロナルド・レーガンも銃撃された、

・ケネディ、レーガンと同じくアウトサイダーとして台頭したトランプ氏は、彼らに続く第三の本物の大統領、本物の愛国者である、

・ケネディ大統領の長男で、1999年に飛行機事故(QAnonはこれをヒラリー・クリントンが仕組んだものという)で死亡したことになっているジョン・F・ケネディ・ジュニアは実は生きていて、彼こそQである、

・トランプ大統領とQは「腐ったエリート」との一大決戦(ストーム、「嵐」と呼ばれる)の準備を整えつつある

この陰謀論のなかで、CIA元長官でトランプ氏に批判的なブレナン氏は「ディープ・ステイト」の代表的人物の一人と扱われ、QAnon支持者から「アルカイダ掃討に不手際が多かったのは実はムスリムだから」などと名指しされてきた。

つまり、QAnon支持者にとってブレナン氏のアクセス権限の剥奪は当然であるばかりか、「ストーム」が本格的に始まる予兆として喜ばしいステップでさえある。実際、ホワイトハウスの発表があった8月15日以降、多くのQAnon支持者がウェブ上に「裏切り者ブレナンの排除」を讃える動画やメッセージを拡散させている。

陰謀論は現実になるか

トランプ氏をアメリカ再生の救世主と仰ぐQAnonは、いまやトランプ政権を支える一つの柱といってよい。

選挙介入などしていないと言うプーチン大統領の言い分をほぼそのまま認めたことは、トランプ支持者の間にも動揺を生んだ。また、中国などとの貿易戦争は共和党支持者の多い農家にも打撃を与えている。

政治的な失点が続く背景のもと、多くの人からみていかに荒唐無稽な陰謀論者でも、非合理的であるだけに状況によって揺らぎにくいQAnonは、トランプ氏にとって最も頼れる支持基盤とさえみなしやすくなる。そのため、QAnonがトランプ政権を支えるのと並行して、トランプ政権がQAnon の歓心を買いやすくなっても不思議ではない。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

再送次期FRB議長にウォーシュ氏指名、トランプ氏「

ビジネス

米金利は「中立」水準、追加利下げ不要=セントルイス

ワールド

トランプ氏、ウクライナ紛争終結「合意近づく」 ロ特

ワールド

トランプ氏「イランは合意望む」、プーチン氏はイラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story