コラム

「季節感」がない中国にバカ騒ぎの季節がやって来る

2016年12月08日(木)16時25分

中国人がクリスマス、ハロウィーンで大騒ぎするわけ

 経済成長と引き替えに「季節感」を完全に失ってしまった中国人だが、今、別の形で取り戻そうとしている。それがクリスマスやハロウィーン、バレンタインなどのイベントだ。これらの西洋由来の記念日では今や日本以上の盛り上がりを見せているといっていい。

 今年のハロウィーンを私は深圳で過ごした。歓楽海岸というショッピングモールにいたのだが、そこは仮装を楽しむ人々であふれかえっていた。米国風の伝統的仮装だけではなく、人気の映画キャラクターやアニメキャラクターなどバラエティ豊か。インターネット時代だけに海外の流行はすぐに入ってくる。ハロウィーンの楽しみ方では日本も中国も大きな違いはないのかもしれない。

【参考記事】ハロウィンのコスプレは法に触れる可能性があります

 唯一違いがあるとするならば場所だろうか。渋谷が有名だが、日本ではこうした祝祭日を街中などで祝うことが少なくない。公共空間で祝祭をあげる、まさに祭りの論理だ。見ず知らずの人々が一緒に喜びをわかちあい、すさまじいエネルギーを発散している。まあ私からすると、力の限り遊びまくる若者たちに、もう少し勉強した方がいいのではと小言のひとつも言いたくなるのだが。

 一方の中国では、基本的に観光地やクラブなど限られた空間でしか騒げない。それというのも「治安がすべてに優先する」がモットーの中国政府にとって「お祭り的空間」は許容しがたい存在だからだ。最近では規制が緩和されたが、一昔前まではロックなどのコンサートも厳しく規制されていたほど。日本ではDJポリスが話題になったが、中国だったら武装警官隊が動員されていたかもしれない(笑)。

 クリスマスやハロウィーンといった西洋由来の記念日だけではなく、清明節や端午節、中秋節などの伝統的祭日、さらにはごく最近できたばかりの光混節(独身者の記念日)など、あらゆる記念日で中国はおおいに盛り上がる。失われた「季節感」や「旬」を記念日で埋めることによって取り戻そうとしているわけだが、「季節感」が失われただけのバカ騒ぎには寂しさを禁じ得ない。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正中国が北京で軍事パレード、ロ朝首脳が出席 過去

ワールド

米制裁下のロシア北極圏LNG事業、生産能力に問題

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story