コラム

李小牧の都知事選観察記、嵐を起こす「鉄娘子」に感服

2016年08月17日(水)18時50分

 続いて増田寛也氏について。中野駅前の演説を聴いた。やはり知名度不足がたたっているのか、あまり人が集まっていない。以前に同じ場所で別の政治家の演説を聴いたことがあるが、その時は駅前の階段まで人でぎっしりだった。今回は増田氏の周辺にしか人は集まっていなかった。

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写真:筆者

 印象深かったのが、増田氏が私のすぐ近くまで来た時のことだ。握手しようと私が差し出した手に気付かなかったようで、増田氏は通り過ぎてしまった。それを見たスタッフが増田氏に耳打ちすると、すぐにきびすを返して握手してくれた。こうしたスタッフの細やかな心遣いは票の差を生むことになるのだろう。

女性や外国人の力が都政には不可欠だ

 そして小池百合子氏。高田馬場駅前で街頭演説を聞いた。投票日直前というタイミングで疲れていたせいか、はたまたすでに勝利を確信していたせいか、集まった人々とふれあう時間は短かった。それでも強いパワーを感じさせた。

 正直に告白すると、小池百合子氏は私の好みのタイプである。まず顔が好みだ(笑)。8年前、ニューズウィークに「『鉄娘子』小池百合子こそ日本の首相にふさわしい」と題したコラムを寄稿し、「思わぬ所に藤あや子似の美人を発見した。自民党総裁候補の小池百合子だ」と書いたほど。ちなみに石原慎太郎氏の"厚化粧"発言が物議をかもしたが、彼と私は歌舞伎町浄化作戦をめぐって激論を交わした因縁の仲である。どうやら女性の好みでも正反対らしい。

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写真:筆者

 さて冗談が過ぎた。もちろん顔がポイントなのではない。5つもの政党をわたり歩きながら、自らの個性を発揮し続ける強さに感嘆したのだ。鉄のような精神力を持つ、強い女性のことを中国語で「鉄娘子」と言う。小池氏は今回も「鉄娘子」の本領を発揮し、メディアと都民の注目をかっさらい、批判にも軽妙に応じながら、無所属という劣勢をひっくり返して当選を果たした。

 民進党関係者としては残念だが、小池氏のような「鉄娘子」が日本に求められていることは間違いない。日本は素晴らしい国だが、政治的にも経済的にも停滞感が漂っている。空気を読まずに嵐を起こし続ける強さが必要なのだ。当選した以上は都知事としても嵐を起こし続けていただきたい。そのためには新しい力が必要だ。

 女性活用、そして外国人の力を取り入れることも不可欠だろう。保守派として知られる小池氏だが、そうした枠組みを突破できるかどうかに注目している。もちろん必要とされれば、「元・中国人、現・日本人」の私もアドバイスを惜しまないつもりだ。

 楽しみなのが8月22日(日本時間)のリオ五輪閉会式だ。次期開催地の首長として小池百合子氏は登場する。東京を世界にアピールする絶好の機会、藤あや子似の容貌を生かしてド派手な着物姿で世界を驚かせて欲しい。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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