コラム

知床遊覧船沈没事故から考える、名ばかりの安全対策を見直す道

2022年05月20日(金)17時45分

このように2000年代に入って筆者が知る限りでも、さまざまな安全対策が実施・強化されてきた。その点については高く評価している。

一方、安全施策を考えても徹底するのが難しい零細企業の運輸安全マネジメントの運用について、国土交通省も以前から手をこまねいてきた。中小零細企業が多い点で、小型船舶と貸切バスの業界の問題点が似ている。

今回の検討会で特にポイントとなるのは、中小零細企業の経営者の質の問題と事業者の安全対策をチェックする国交省が機能していなかった点だ。

経営者のリーダーシップのもと安全管理の施策が進められているが、その経営者自身のモラルが低ければ安全対策は名ばかりのものとなる。民間企業の経営者の質の確保は、従業員の採用や育成と異なるため、参入時の許可要件を厳しくするなどの対応がとられる可能性がある。

また、運輸安全マネジメントなどの安全対策は、国交省が評価したり事後監督するものだ。評価や事後監督する国交省が機能しなければ安全は保たれない。国交省では運輸安全マネジメントの周年記念の強化月間、軽井沢バス事故や関越道バス事故に際した一斉点検などを行っている。教訓を忘れないためにも、引き続き節目の日には事業者がコンプライアンスを徹底できているか、国交省は機能しているのかを見直し、第三者機関がチェックする機会を設けるなど気の引き締め方を工夫した方がいいだろう。

新型コロナウイルスの流行で人の移動を抑制され、乗務員や船員不足に頭を抱える旅客事業者は売上を大きく落とし疲弊している。観光が動き出しつつある今、陸海空全モードで気を引き締めないと知床と同じような事故が他でも起こりかねない。

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プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

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