コラム

イスラエルの「ハマス掃討作戦」でパレスチナは地図から抹消へ? 英国による「国家承認」の重要性

2025年09月24日(水)17時12分

歴史に残る「三枚舌外交」の汚名を承知の上でユダヤ人国家を認めた前段とパレスチナ住民の権利を守る後段を対にして掲げることで、今回の国家承認を「反イスラエル」ではなく「二重責任の履行」と改めて定義し、イスラエルの暴走に歯止めをかけるレトリックだ。

同じ日、カナダ、オーストラリア、ポルトガルも続いて国家承認した。翌22日エマニュエル・マクロン仏大統領もサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と共催した国連会議で承認した。ベルギー、ルクセンブルク、アンドラ、サンマリノ、マルタも後に続く予定だ。

米国に入国を禁止されたアッバス議長はビデオ演説で恒久停戦を求め、ハマスに武装解除を呼びかけた。

国連加盟193カ国の2/3以上がパレスチナ国家を承認

国連加盟193カ国のうち3分の2以上がパレスチナ国家を承認している。今回の承認は政治的な象徴だ。ガザの破壊と飢餓、イスラエルによるヨルダン川西岸地区への入植が進み、併合が既成事実化すれば、パレスチナは地図から消え、和平交渉の土台自体がなくなる。

その崖っぷちでブレーキをかけた。米国、日本、イタリア、ドイツは承認していない。親イスラエルの米国世論を受け、トランプ氏はスターマー氏に「承認には反対だ」と釘を刺した。日本は波風を立てまいとトランプ政権に配慮しているのは言うまでもない。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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