コラム

お手本は「シンゾー・ドナルド合意」か...英米が締結した、関税削減の協定は「成功例」になれるか?

2025年05月13日(火)17時45分

これを受けて、英国自動車製造販売者協会(SMMT)の最高経営責任者マイク・ホーズ氏は「米国は英国にとり自動車輸出の2番目に重要な市場。関税削減の合意は朗報だ。インドとの合意も両国の緊密な関係をさらに強化する歴史的な一歩だ」と評価した。

しかし4月の英国新車市場の需要は期待外れの水準にとどまる。電気自動車(EV)市場の成長を持続させるには、英国政府による新たな財政的インセンティブやお手頃な価格で全国的に利用可能な充電インフラの整備といった支援策が不可欠だとホーズ氏は付け加えた。

わずか6週間でまとめた「緩い貿易協定」

英シンクタンク「政府のための研究所」(IFG)のポッドキャスト(5月9日付)で英紙フィナンシャル・タイムズの世界貿易担当編集長ピーター・フォスター氏は「英国が米国とこのような協定を締結した最初の国になったという意味でこれは勝利と言えるだろう」と解説した。

フォスター氏によると、今回はわずか6週間でまとめた「緩い貿易協定」に過ぎず、3年がかりでインドと締結したすべての貿易を網羅した従来の意味での協定ではない。「英米の合意内容にはかなり不透明な点があり、まだ協議すべきことが山ほど残っている」という。

第1次トランプ政権は国家安全保障を理由に鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課した。バイデン政権はこのトランプ関税を完全には撤廃せず、欧州連合(EU)や日本に対して一定数量まで関税をゼロにするクオータ制に変更した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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