コラム

クリーンさが売りの英スターマー首相を、2つの「金銭スキャンダル」が直撃...官邸は早くも「分裂」危機

2024年09月20日(金)16時19分

調査の徹底ぶりと公平さでグレイ氏には称賛と批判が寄せられた。支持者からは政権中枢の不正を暴いた筋金入りの官僚と評価された。しかし保守党からは職権を逸脱した党派的人物と見なされた。スターマー政権の要職に就いたことで官僚の政治的中立性を大きく損なった。

グレイ氏の報酬は年17万ポンド(約3200万円)。首相の報酬より3000ポンド(約57万円)も高い。グレイ氏本人が自身の報酬を決定する際に何らかの役割を果たしたのか。労働党からの追加報酬に関する透明性についても保守党は追及している。

「政府高官の間で険悪な関係が生まれている」

有能で、やる気満々のグレイ氏の仕事ぶりにも官邸内の不満が爆発。グレイ支持派から称賛されているが、反グレイ派からはすべての意思決定において彼女に権限が集中しすぎているとの批判が噴出する。他の意見が抑えられ、官邸に緊張が生じている。

英BBC放送のクリス・メイソン政治部長は「グレイ氏の報酬額について知ることがなぜ重要なのか」(19日付)と題したコラムで「同等の地位の公的部門や民間部門の人々に比べてかなり少ない。この話の本質は報酬そのものではない」と解説している。

グレイ氏は官邸で政治と実務をつなぐ、まさに要だ。「正当か否かは別として彼女の役割に対する怒りとフラストレーションのレベルが問題なのだ。労働党が選挙で勝利してから3カ月も経たないうちに政府高官の間で険悪な関係が生まれている」(メイソン政治部長)

2007年から英国の首相官邸をウォッチしているが、政権発足早々、官邸が分裂しているのを見るのは初めてだ。しかもスターマー首相自身、14年にわたった前保守党政権を批判するばかりで、何をしたいのかビジョンが何一つ伝わって来ない。

これは英国の終わりの始まりを意味しているのか。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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