コラム

世界に押し寄せる「オーバーツーリズム」の津波...観光客数を「制限」する規制も、各国が続々採用

2024年07月25日(木)17時28分

観光客やクルーズ客数を制限

フランス北部沿岸のイル=ド=ブレハは大都市のアムステルダムやベネチアに続き、オーバーツーリズム対策として観光客数を制限する。8月23日まで午前8時半から午後2時半の間、地元住民、セカンドハウス所有者、労働者を除いて4700人しか入れなくなる。

エーゲ海に浮かぶギリシャ・サントリーニ島では1日に1万1000人のクルーズ客が到着したことから8000人の上限を設けた。どの国でも観光税引き上げ、入場料、時間枠制度、事前予約制度の導入、オーバーツーリズムの抑制を目的としたキャンペーンなど対策を講じている。

コロナ後の旅行急増でオーバーツーリズムが改めて大きな懸念となっている。しかし2019年、国連世界観光機関はすでに「観光が世界中の地域社会に生み出しうる機会を最大限に活用するために、そのような成長は責任を持って管理されるべきである」と呼びかけている。

オーバーツーリズムの問題は克服できるか

英ノッティンガム大学のマリーナ・ノヴェッリ教授(観光)らは昨年10月、世界経済フォーラムに「いかにオーバーツーリズムを克服できるか」と題して寄稿している。オーバーツーリズムは観光客が多すぎることが問題と単純化されがちだが、数え切れない要因が絡んでいる。

観光客の消費や投資から生じる利益を優先するのではなく、政府や自治体は断固とした態度で過剰観光に対応しなければならない。地方自治体は定員制限を設ける措置を講じ、守られない場合は不作為の責任を負う。観光客も自分たちの行動に責任を持たなければならない。

観光に投資する側も地元の優先事項やニーズを高めるようなイニシアティブを支援すべきだ。各国の観光局は地域の背景と調和した開発を支援しなければならない。単純化しすぎた処方箋は持続可能で公平な観光の未来への可能性を放棄するものだとノヴェッリ教授は警鐘を鳴らす。

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、日本など45カ国のビザ免除措置を来年末まで延

ビジネス

MUFG主導の気候金融ファンド、6億ドル調達

ビジネス

米財務省、第4四半期借入額見通しは5690億ドルに

ビジネス

米株式市場はAIブームの限界を見落とし=ブリッジウ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story