コラム

ガザ攻撃めぐり、欧米で「親イスラエルvs親パレスチナ」の対立激化...EUは難民危機の再来に戦々恐々

2023年10月17日(火)19時49分

英国は13日、東地中海にポセイドンP-8などの偵察機、英国海軍の支援艦2隻、英国海兵隊約100人を派遣した。しかしパレスチナ寄りの英最大野党・労働党のジェレミー・コービン前党首はハマス批判を避け「即時停戦と緊急の脱エスカレーションが必要だ。(イスラエルの)占領を終わらせることが公正で永続的な平和を実現する唯一の手段だ」と唱える。

「イスラエルでの民間人への恐ろしい攻撃は嘆かわしいものだ。しかしパレスチナ人の無差別殺戮を正当化することはできない」「すべての民間人を標的にすることを非難すべきだ。なぜ政治家はこの基本的な道徳原則を順守し、普遍的かつ平等に国際法を守ることができないのか。どれだけ罪のないパレスチナ人の命が自衛の名の下に抹殺されるべきなのか」

「西側指導者はガザ殲滅にゴーサインを出した」

労働党内に反ユダヤ主義が蔓延るのを黙認したとして党員資格を停止されたコービン氏は「西側の政治指導者はガザ殲滅にゴーサインを出した」「私たちはガザの完全な消滅を目撃している恐れがある。声を上げようとしない政治指導者は自分たちが許している恐怖を永遠の恥と感じるべきだ。パレスチナ人への集団的懲罰は戦争犯罪だ」と言葉を叩きつけた。

一方、ジョー・バイデン米大統領は10日、ハマスのイスラエル攻撃を「純粋無垢な悪」「まさに悪の所業」と呼び「ハマスの残忍さは過激派組織『イスラム国(ISIS)』の極悪の所業を思い起こさせる。これはテロリズムだ。この攻撃はユダヤ人に対する千年にわたる反ユダヤ主義と大量虐殺が残した痛ましい記憶と傷跡を呼び覚ました」と表明した。

バイデン氏は「われわれはイスラエルとともにある。 イスラエルが自国民を保護し、自国を防衛し、この攻撃に対応するために必要なものを確保できるようにする。ハマスが支持するのはパレスチナ人の尊厳と自決の権利ではない。 その目的はイスラエル国家の消滅であり、ユダヤ人の殺害である。彼らはパレスチナ市民を人間の盾として使っている」と非難した。

バイデン政権はアイアン・ドームを補充する弾薬や迎撃ミサイルなどの軍事支援を急増させた。空母ジェラルド・R・フォード打撃群を東地中海に移動させ、戦闘機のプレゼンスを強化した。フランス、ドイツ、イタリア、欧州連合(EU)、英国の首脳と協議し、米欧が一致団結した対応を取れるよう調整した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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