コラム

「台湾は自由の灯台だ」...対中国の最強硬派、前トラス英首相の台湾訪問が重要な理由

2023年05月12日(金)17時32分
リズ・トラス前英首相

2月に来日して「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」で講演を行ったトラス前首相 Androniki Christodoulou-Reuters

<「英国の櫻井よしこ」とも言うべき存在のリズ・トラス前英首相は以前から、「台湾との関係強化のためにできる限りのことをすべき」と訴えている>

英国の対中最強硬派の1人、「英国の櫻井よしこ」ことリズ・トラス前英首相が近く台湾を訪問すると10日ツイッターで明らかにした。ナンシー・ペロシ米下院議長(当時)が昨年8月、台湾を訪問、対抗措置として中国は実弾を含む過去最大の軍事演習を実施して台湾海峡は一気に緊張しただけに、前英首相の台湾訪問に対する中国の反発が予想される。

「この重大な局面で、来週、台北を訪問できることをうれしく思う。招待してくれた台湾外交部に感謝するとともに、もっと早く受け入れることができればよかったと思う。私たちは民主的に選ばれた台湾政府および台湾の人々を支援するために、できる限りのことをしなければならない」(トラス氏のツイッター)

英メディアにトラス氏は「台湾は自由と民主主義の灯台だ。北京の政権がますます攻撃的な行動や言動をとる中、台湾の人々と直接連帯することを楽しみにしている」とコメントしている。英国の首相経験者としてはマーガレット・サッチャーも1992年と96年に台湾を訪問している。

今年2月、東京で開かれた「対中政策に関する列国議会連盟」(IPAC、議長イアン・ダンカンスミス英保守党元党首)のシンポジウムで講演し「国際社会は台湾支援のため防衛、経済、政治を協調して行うパッケージに合意すべきだ」と訴えている。その内容を見ておこう。

「モスクワの攻撃的で敵対的な行動に対して西側がもっと早く厳しく対応できなかったことを後悔している。中国についても今、行動しなければ、長期的に大きな犠牲を払うことになりかねない。各国政府は中国に、台湾への軍事的攻撃は戦略的な誤りであることを示す必要がある」

「台湾を支配することが習近平の野望だ」

トラス氏は習近平国家主席について、中国が台湾を支配することが彼の野望であるのは明らかと断言している。昨年、中国は台湾の防空識別圏(ADIZ)に1700機以上の航空機を送り込んだ。前年より倍近くに増えた。今年に入ってから実弾演習が行われている。「このような侵犯は許されないというメッセージを北京に伝える必要がある」とトラス氏は言う。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ミランFRB理事の反対票、注目集めるもFOMC結果

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ビジネス

前場の日経平均は反発、最高値を更新 FOMC無難通

ワールド

ガザ情勢は「容認できず」、ローマ教皇が改めて停戦訴
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story