コラム

COP26vs.怒れる若者たち、正しいのはどちらか──最大の争点は市場メカニズム

2021年11月08日(月)06時00分

「パリ協定6条に関する気候変動対策資金の交渉や長期的な資金問題はいまだに野心的なターゲットを欠いたまま暗闇の中にぼんやり浮かび上がっているように見える。人権や先住民族の軽視、国際取引メカニズムのテクニカルな特異性の抜け道とあいまいさ。化石燃料から投資を引きあげるダイベストメントの交渉がテーブルから取り除かれているのはとんでもないことだ」

「交渉担当者には最終決定に向け大きなプレッシャーがかかっているが、いくつかの国がこの重要なテーマの進展を妨げているのは恥ずべきことだ。人権や先住民族の権利が6条の意味のない飾りにならないようにしなければならない。透明性があり、アクセス可能で、説明責任を果たすことができる苦情処理メカニズムを組み込んで、人権と先住民族の権利が保護されるようにする必要がある」

「世界の平均気温上昇を摂氏1.5度に抑える目標が死なないよう温室効果ガス削減プロジェクトを検証できるようにしなければならない。世界の金融資本が化石燃料から低炭素技術、緩和策、適応策に再配分された場合にのみ目標は可能になる。しかし低炭素化への支援はまだまだ不十分だ。温暖化阻止を最終的に決定し、透明性の向上と説明責任の新たなバランスをとることを求める」

「パリ協定を成功させるか、失敗させるか、6条はカギを握る。グレタさんの言う通り、先住民族の人権についても十分に考慮する必要がある。単なるカネ儲けや取引だけではなく、それを超えるものでなければならない。第二の問題は先進国の企業はただ排出し続け、相殺するが、実際に排出量を減らすのは誰なのかということだ。排出量をトレードオフするだけではなく、確実に排出量を削減するかどうかについてもっとガイダンスが必要だ」

「第三の問題は、これらの取引がどのように計上されるのか具体的なメカニズムや透明性がないということだ。それぞれの国は自分たちの間で取引できるが、明確な会計方法がない。本当に排出と削減が相殺されたかどうか分からない。6条を巡ってはまだ多くのあいまいさが残っている。私たちはグレタさんの意見に大いに賛同する。まだまだやるべきことはたくさんあるが、COP26で6条の結論を出す必要がある」

「途上国にはオフセットに参加するそれぞれの動機がある。もちろん彼らにとっては収入源でもあるし、途上国が自国の適応策や損害賠償の資金を調達するための資金源にもなる。しかし、それは被害を受けている地域社会の問題だ。途上国政府はオフセットを行うかもしれないが、最終的に被害を受けるのはコミュニティーだ。ある国の政府がオフセットに賛成しても自分たちのコミュニティーのことを考えていないとしたら、大きな間違いだ」

「6条の交渉になぜこれほど時間がかかるのか。キーメッセージは存在している。私たちは達成すべきことに耳を傾けていないだけだ」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story