コラム

「感染力強いデルタ株のR(再生産数)は最大7」英当局 日本はワクチン接種急げ

2021年06月17日(木)11時47分

「つまりバランスの問題だ。スウェーデンのようないくつかの国では社会的責任を通じて多くのことを行ってきた。他の国では厳しく立法化されている。わが国では予防接種が大々的に展開されているので、そのどちらでもない道がある。ハイリスク地域では公共交通機関でのマスク着用が継続される可能性がある。その方が利用者は快適かもしれない」

英アストラゼネカ(AZ)製ワクチンを開発したオックスフォード大学ワクチングループの責任者アンドリュー・ポラード教授も同委員会で「PHEが公開したデータでは、ワクチンを2回接種していれば90%以上、入院を免れる。変異株の地域感染が広がっていても、入院を回避できれば公衆衛生上の危機は終わる」と指摘した。

PHEによると、米ファイザー製ワクチンを2回接種していれば入院しなくて済む効果は96%、AZ製ワクチンなら92%だという。

ワクチン2回接種で入院を回避せよ

ポラード教授は「ワクチン接種から時間が経過すると、発症を防ぐ効果も低下する。しかし大事なのは入院を防げるかどうかだ。このウイルスが地球上からなくなることはない」と、発症リスク防止にこだわり過ぎるより、入院を回避して医療システムが逼迫しないことを防衛ラインにすべきだと強調した。

英政府は7月19日までに18歳以上全員に1回目の接種を済ませ、2回目接種を成人の3分の2に行う方針だ。安定したワクチン供給を確保するため、ワクチン予防接種合同委員会(JCVI)は12~17歳への接種を当分の間、棚上げする見通し。40歳未満へのAZ製ワクチン接種を回避しているため、米ファイザー製やモデルナ製が不足し始めているためだ。

日本でもデルタ株は12都府県で検出されており、国立感染症研究所は今後の拡大を注視しているが、イギリスではデルタ株は本当にアッという間にアルファ株を駆逐した。PHEによると、検査した日から2週間以内に入院するリスクでみるとデルタ株はアルファ株の2.26倍もあるそうだ。

日本は東京五輪・パラリンピック開催にかかわらず、とにかくワクチン接種を急がなければならない。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

セルビアで国連会議開幕、開発推進を表明 トランプ氏

ワールド

米原油・天然ガス生産、4月は過去最高=EIA

ワールド

米司法省、北朝鮮人グループをハッキングで摘発 2人

ワールド

米大統領、対キューバ強硬措置の覚書に署名 前政権の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 6
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 8
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story