コラム

日立製英高速列車の亀裂は800車両 応力腐食割れが原因か 日本の製造業に打撃

2021年06月02日(水)19時05分

日立レールは亀裂が見つかった車両の製造場所について「最初は日本で製造された。それからイタリアでも製造された。最終的にイギリスで完成された」と説明する。800系の車両に使われているアルミ合金のほとんどはデータ改ざん問題で揺れた神戸製鋼所から納入されている。

日立レールは亀裂の入ったボルスタが神戸製鋼所製かどうかについて回答を保留しているが、神戸製鋼所は筆者の問い合わせに「当社はアルミ押出材を日立のイギリス車両向けに納入している。日立の車両の問題が報道されていることは承知しているが、日立から当社への調査依頼などは現時点でない。調査要請などあれば真摯に対応する。品質事案の対象材については当時の納入先といずれも安全性を確認できている」と強調した。

日立レールによると、IEPでは日立側が列車運行会社にリースする列車に基づいて支払いを受け取る仕組み。列車が利用可能になった場合にのみ支払いが発生する。列車運行会社ではなく日立が亀裂問題のリスクを負うため、政府と納税者には負担は生じないという。

しかし「ドル箱」の高速列車が計画通り運行できなければ列車運行会社は大幅な減収となり、最終的に赤字になれば税金から補填されるのは避けられないのではないだろうか。

ロンドンとマンチェスター、リーズを最高時速360キロで結ぶ高速鉄道計画ハイスピード2(HS2)でも新幹線車両で実績を誇る日立もカナダのボンバルディアと組んで車両の大型受注を目指している。しかし今回の大量亀裂で「鉄道の日立」の信頼は大きく揺らぎ、HS2の受注だけでなく「モノづくり日本」の看板にも大きな亀裂が走ったのは言うまでもない。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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