コラム

黒海で「航行の自由作戦」の英艦にロシア機が警告爆撃4発 ここはプーチン大統領の「レッドライン」

2021年06月24日(木)14時55分

クリミア危機では、ヤヌコビッチ失脚でウクライナの親欧米化が加速し、クリミア半島のセバストポリ海軍基地が使えなくなり、黒海から地中海に展開できなくなることを恐れたプーチン大統領がクリミア併合を強行した。シリア内戦でもアサド政権が崩壊することを恐れて軍事介入している。

プーチン大統領は自分で設定した「レッドライン」を越えたと判断したら即座にプランBを発動するのが特徴だ。その時、バイデン大統領はどう出るのか、出方次第で軍事衝突というシナリオは否定できないが、しばらくプーチン大統領とバイデン大統領のにらみ合いが続きそうだ。

【クリミア危機・ウクライナ東部紛争の経緯】




2013年11月、ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領が、欧州連合(EU)との関係を強め、ロシアのユーラシア経済連合(EAEU)に関わる可能性を排除する連合協定の調印手続きを突然、凍結。親欧路線の転換に市民や野党勢力が反発。反政権デモ広がる

14年2月、ヤヌコビッチ大統領が失脚、国外逃亡図る

14年3月、ロシア軍がクリミアを支配、「住民投票」を実施してロシアへの編入を強行

14年4月、ウクライナ東部で親ロシア派が武装闘争始める。ロシアが軍事支援。これまでに1万人以上が死亡、2万4千人近くが負傷。150万人が避難

14年7月、マレーシア航空機が親ロシア派支配地域から発射された地対空ミサイルによってウクライナ領空で撃墜され、乗員乗客298人全員が死亡

15年2月、ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの4首脳がベラルーシ首都ミンスクで停戦合意

18年1月、米政府がウクライナ東部紛争に関連する個人21人と9社に新たな制裁

18年3月、米国務省がウクライナへの対戦車兵器の売却を承認

18年7月、米国防総省がウクライナへの2億ドル追加援助を発表。14年以降の援助総額は10億ドルに

18年10月、ウクライナが同国西部でNATOに加盟する7カ国とともに空軍の大規模演習に参加

18年11月、ロシアが黒海でウクライナ海軍の艦艇3隻を拿捕

19年4月、ゼレンスキー大統領が当選。ウクライナ東部やクリミアを実力で奪還すると表明

21年3月、ロシア軍がウクライナ国境付近や占領地域に集結

21年4月、EUのジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表が史上最大規模のロシア軍10万人以上がウクライナ国境付近に集結していると発言

・ゼレンスキー大統領はウクライナのNATO加盟を改めて求める

21年5月、先進7カ国(G7)外相が「国際クリミア・プラットフォームの立ち上げのためのウクライナのイニシアティブを原則として歓迎する」と表明

21年6月、バイデン大統領とプーチン大統領がスイス・ジュネーブで会談

参考:「2021年春のウクライナにおけるエスカレーション危機」(防衛研究所地域研究部米欧ロシア研究室、山添博史氏著)

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日仏、円滑化協定締結に向けた協議開始で合意 パリで

ワールド

NATO、加盟国へのロシアのハイブリッド攻撃を「深

ビジネス

米製造業新規受注、3月は前月比1.6%増 予想と一

ワールド

暴力的な抗議は容認されず、バイデン氏 米大学の反戦
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story