コラム

IR実施法成立、だがギャンブル依存症が最も恐ろしいのはカジノではない

2018年07月26日(木)19時45分
IR実施法成立、だがギャンブル依存症が最も恐ろしいのはカジノではない

規制の行き届いたカジノより繁華街の店に置かれた賭博ゲーム機が怖い(2017年、ロンドン) Peter Nicholls-REUTERS

[ロンドン発]カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法が20日夜の参院本会議で、自民・公明の与党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。2020年代前半にも最大3カ所のIRが開業する。

20兆円市場のパチンコ、さらに競馬・競輪・競艇・オートレースの公営競技に、カジノも加われば、日本は押しも押されもせぬ「賭博大国」になるという声が上がっている。

国際カジノ研究所(木曽崇所長)は、北日本、東京、大阪に3つのIRが誕生した場合、カジノ入場者は1200万人(訪日外国人客はこのうち約36%)、カジノに落ちるカネは7850億円と推計する。パチンコ産業に比べると市場は限られる。

ギャンブル依存症対策として、カジノの規模をIRの延床面積の3%以下に、入場回数を 28日間で10回に制限。本人・入場回数の確認手段としてマイナンバーカードを活用する。入場料を6000円に設定した。

安倍晋三首相は「世界最高水準の規制」と胸を張るが、朝日新聞は「事業者から条件付きで借金できる制度まで盛り込まれた」「依存症対策の実効性の疑問は残されたまま」と批判的だ。

英国のギャンブル依存症は

賭博サイト、カジノ・オルグによると、ギャンブル市場は急拡大。ギャンブル大国(地域を含む)ランキングは首位のマカオを除くと、米国、英国、オーストラリア、カナダとアングロサクソン系の国が続く。

筆者が暮らす英国では小さな町にも、政権崩壊や英王室まで賭けの対象にしてしまうブックメーカー(賭け屋)やルーレットなどの賭博ゲーム機がある。

2005年に規制緩和した際、設けられた「賭博委員会」によると、英国のギャンブル収益は総額138億ポンド(2兆148億円)。内訳は次の通りだ。

賭け屋8531店、収益33億5400万ポンド
ナショナル・ロッテリー(国営宝くじ)、同29億7900万ポンド
カジノ146店、同11億6400万ポンド
ビンゴ583店、同6億8700万ポンド
大人向けゲーム機店1476店、同4億1400万ポンド

「どんな条件であれ、カジノ事業者からお客が借金できる仕組みは間違い。しかし、カジノは最悪のギャンブルではありません。従業員が、お客が問題を抱えていないか、怒っていないか見張っているからです」

こう話すのは英国で賭博規制を訴えるアダム・ブラッドフォードさん(25)だ。彼によると、カジノは一番規制の行き届いた所で、問題は繁華街の店に置かれているルーレットなどの賭博ゲーム機だという。

1分間に300ポンド、1時間で1万8000ポンド(約263万円)が賭博ゲーム機に吸い込まれていく。実は、アダムさんの父親デービッドさん(61)は、ひどいギャンブル依存症だった。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com

ニュース速報

ワールド

米中が「第1段階」通商合意、関税発動猶予 米農産物

ワールド

米中の「第2段階」通商合意、複数回に分割も=米財務

ワールド

北朝鮮、衛星発射場で再び実験 米に対抗し「新兵器開

ワールド

特別リポート:ロイターの香港報道を制限、リフィニテ

MAGAZINE

特集:進撃のYahoo!

2019-12・17号(12/10発売)

メディアから記事を集めて配信する「巨人」プラットフォーマーとニュースの未来

人気ランキング

  • 1

    カイロ・レンは嘘をついていた?『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』新キャラと予想

  • 2

    共産党国家に捧げるジョーク:変装した習近平に1人の老人が言ったこと...

  • 3

    サルの細胞を持つブタが中国で誕生し、数日間、生存していたことが明らかに

  • 4

    キャッシュレス化が進んだ韓国、その狙いは何だった…

  • 5

    意識がある? 培養された「ミニ脳」はすでに倫理の…

  • 6

    中国の探査機が月に持ち込んだ植物の種、ハエの卵...…

  • 7

    習近平を国賓として招聘すべきではない――尖閣諸島問題

  • 8

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 9

    離脱強硬派ジョンソン勝利でイギリス「連合王国」解…

  • 10

    韓国「アナ雪2」1000万人突破の影でディズニー訴えられ…

  • 1

    熱帯魚ベタの「虐待映像」を公開、動物愛護団体がボイコット呼び掛ける

  • 2

    インフルエンザ予防の王道、マスクに実は効果なし?

  • 3

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を流し込み...

  • 4

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 5

    共産党国家に捧げるジョーク:変装した習近平に1人の…

  • 6

    中国で焚書令、文化大革命の再来か

  • 7

    カイロ・レンは嘘をついていた?『スター・ウォーズ…

  • 8

    東京五輪、マラソンスイミングも会場変更して! お…

  • 9

    トランプ、WTOの紛争処理機能を止める 委員たったの…

  • 10

    サルの細胞を持つブタが中国で誕生し、数日間、生存…

  • 1

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を流し込み...

  • 2

    「愚かな決定」「偏狭なミス」米専門家らが韓国批判の大合唱

  • 3

    「日本の空軍力に追いつけない」アメリカとの亀裂で韓国から悲鳴が

  • 4

    元「KARA」のク・ハラ死去でリベンジポルノ疑惑の元…

  • 5

    「韓国は腹立ちまぎれに自害した」アメリカから見たG…

  • 6

    文在寅の経済政策失敗で格差拡大 韓国「泥スプーン」…

  • 7

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 8

    GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

  • 9

    GSOMIA継続しても日韓早くも軋轢 韓国「日本謝罪」発…

  • 10

    日米から孤立する文在寅に中国が突き付ける「脅迫状」

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
「STAR WARS」ポスタープレゼント
ニューズウィーク試写会ご招待
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!