コラム

安哲秀氏との候補一本化に成功し、韓国の次期大統領になるのは誰か

2022年02月03日(木)11時19分

一方、候補一本化に失敗し、選挙で負けた事例もある。1987 年の第13代大統領選挙では民主化陣営の金泳三(キム・ヨンサム)氏と金大中氏の候補一本化が推進されたものの、失敗に終わり、結局、軍部出身の盧泰愚氏が大統領に当選することになった。

また、2007年の第17代大統領選挙では与党圏の「大統合民主新党」の鄭東泳(チョン・ドンヨン)氏が「民主党」の李仁済(イ・インジェ)氏と、「創造韓国党」の文国現(ムン・グクヒョン)氏との間で候補一本化を推進したものの、最終的に決裂し、野党「ハンナラ党」の李明博氏に大敗し、政権が交代されることになった。

このような過去の事例を参考すると、候補一本化が韓国の大統領選挙に与える影響力は大きいと言える。今回の大統領選挙でも候補一本化の噂はマスコミから報道されているものの、まだどちらの候補者も候補一本化について積極的な発言をしていない。

しかし、安候補との候補一本化が選挙で有利であると判断された場合は、野党の尹候補のみならず、与党の李候補も候補一本化を積極的に推進する可能性は高い。安候補は最近でも「単一化は考えていない」と発言しているものの、両候補から提案される内容により状況は大きく変わると考えられる。

選挙まで35日しか残っていない現時点でも、支持率は両分されており、結果を予測することは容易ではない。しかし、第3の候補、安候補との候補一本化に成功する人が韓国の第20代大統領になる可能性が高いだろう。誰が安候補との候補一本化に成功し、選挙で有利な立場になるのか、また、その影響を受け、韓国の第20第大統領になるのか今後の行方に注目したい。

※韓国の第20第大統領選挙の今後のスケジュール
・2022年2月13~14日:候補者の立候補届け出
・2022年2月15日:選挙運動スタート
・2022年3月4~5日:事前投票
・2022年3月9日:第20第大統領選挙の投票日
・2022年3月10日:選挙結果発表
・2022年5月10日:新大統領就任

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米関税で見通し引き下げ、基調物価の2%到達も後ずれ

ワールド

パレスチナ支持の学生、米地裁判事が保釈命令 「赤狩

ワールド

イラン、欧州3カ国と2日にローマで会談へ 米との核

ワールド

豪総選挙、与党が政権維持の公算 トランプ政策に懸念
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story