コラム

韓国とアメリカがスワップ取極を再延長、日韓スワップ取極も可能か

2020年12月24日(木)16時51分

互いの経済のためにも、日韓関係の突破口はないものか MicroStockHub-iStock.

<韓国は、新型コロナ危機による外貨流出とウォン安に備えるため信用力の高い日本とのスワップ取極も希望したが、元徴用工の問題等もあり日本政府の反応は冷たかった>

*このコラムの内容は筆者個人の見解で、所属する組織とは関係ありません。

韓国銀行(韓国の中央銀行)は2020年 12月17日、アメリカの米連邦準備理事会(FRB)と2020年3月に締結した600億ドル規模のスワップ取極を6カ月延長すると発表した。2020年 7月29日の1回目の延長発表以降の2回目の延長で、これによりアメリカとのスワップ取極の満了時期は2021年3月31日から2021年9月30日まで伸びることになった。

韓国は今までアメリカと2回スワップ取極を締結した。1回目はリーマン・ショックによるグローバル金融危機があった2008年10月で、金額は300億ドルだった。2008年のアメリカとのスワップ取極の締結は、韓国にとっては「千軍万馬」を得たようなことだった。信用格付がシングルAに過ぎなかった韓国がアメリカとスワップ取極を締結したことが、海外投資家等を安心させる要因として作用したからだ。実際、当時、アメリカとスワップ取極を締結した国は、EU、日本、スイス、カナダなど信用格付がすべてトリプルAの国ばかりだった。

スワップ取極で途上国支えたアメリカ

韓国は当時1997年のアジア経済危機に比べて外貨準備高を多く保有していたものの、韓国の金融市場に対する海外投資家などの不安感は高まり、ウォン安は加速した。その結果2008年10月28日の為替レートは1ドル=1480ウォン(売買基準率)で、1997年のアジア通貨危機以来の安値を記録した。金融市場の不安を解消させることにおいてはアメリカとのスワップ取極が最も効果的な方法だった。

アメリカにとっても自国発の金融危機により、韓国などの新興国の景気が落ち込むことは望ましいことではなかった。新興国に対するアメリカ投資家の投資額が多いこと、新興国がアメリカの国債を持ち出して売り、ドルを確保しようとすることでアメリカの国債市場の不安定性が高まること、新興国の景気低迷がアメリカの景気をさらに悪化させる恐れがあることなどがその主な理由である。結局、アメリカは韓国をはじめとするブラジル・シンガポール・メキシコをスワップ取極の対象国に追加した。2008年に締結された米韓スワップ取極は、その後2回延長され2010年2月に終了した。

アメリカとの2回目のスワップ取極は2020年3月19日に締結された。韓国が2008年以来、アメリカと2度目のスワップ取極に積極的に動き出した理由は、新型コロナウイルスの影響によるウォン安ドル高の進行、株価の暴落等の金融市場の不安とドル資金の逼迫感を解消し、資金流出と通貨下落を防ぐためであった。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story