コラム

日鉄の「USスチール買収」は結局、成功だったのか? 完全子会社化、最終的な「勝者」は誰か

2025年07月04日(金)11時36分

思うように経営できないリスクが半永久的に残る

どのような条件でアメリカ政府が拒否権を発動するのか不透明であり、日鉄はUSスチールを思うように経営できないリスクが半永久的に残る。3兆円以上もの資金を投じ、会社の経営権を事実上、放棄してまでもUSスチールを買収することにどれだけのメリットがあるのか、現時点で合理的な説明は行われていない。


少なくともトランプ政権としては、3兆円の資金を日本から引き出し、USスチールの経営体制や雇用を守ったという点で大きなアピール材料となるのは間違いないだろう。

日本企業は過去、何度も悪い条件でアメリカ企業を買収してしまい、投下資金を回収できないという失敗を繰り返してきた。今回はアメリカ政府も絡んでおり、さらに厄介だ。日鉄の経営陣がよほどの交渉力を発揮しなければ同じ轍を踏む可能がある。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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