コラム

トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「米国の寛大さ」の行方と、トランプの深謀

2025年01月21日(火)19時05分

今のアメリカでは日本側のロジックは通用しない

もっとも、同社の買収が安全保障上の大きな脅威になっているとは考えにくく、バイデン政権の決定は多分に政治的であることは誰の目にも明らかである。

しかし、自国第一主義を掲げるトランプ氏が大統領選で圧勝したことからも分かるように、今、アメリカ国内にはナショナリズムの嵐が吹き荒れている。こうした相手に対して「不当である」といった論調で交渉することはリスクを伴う。

ナショナリズムというのは厄介なものであり、一歩間違えば深刻な対立を招く。日本側から見れば、安全保障というのは言い訳であって、単に外国に買収されたくないという、ある種のわがままと映っているかもしれない。


しかし国内に目を転じれば、コンビニ大手であるセブン&アイ・ホールディングスがカナダ企業から買収提案を受け、政府は安全保障上の脅威になる可能性があるとして、日本企業への出資を規制する外為法の対象になるとの見解を示した。外国企業が日本のコンビニを買収することは日本の安全保障上、脅威だが、日本企業が米国の鉄鋼メーカーを買収することは問題ないというロジックは、今のアメリカでは通用しにくいのが現実だ。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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