コラム

日本でもこれから起きる...世界の航空業界を揺るがしている「旅行の形」の大変化とは?

2023年06月21日(水)18時52分
空港の旅行者たち

06PHOTO/SHUTTERSTOCK

<コロナからの回復によって世界的に旅行熱が高まっているが、その旅行のパターンは以前とは大きく様変わりしつつある>

各国の航空会社が、事業戦略の抜本的な転換に乗り出している。コロナからの景気回復が進み、旅行需要が盛り返しているにもかかわらず、なぜ戦略を大きく変える必要があるのだろうか。その理由は、コロナをきっかけに人々のライフスタイルが変わり、出張を含めた旅行の在り方も大きく変化しているからである。コロナ期間中に一部の識者が指摘していた社会の不可逆的変化が進んでいる。

航空会社世界最大手の米アメリカン航空は、これまで同社のドル箱であった「企業との包括契約」の見直しを進めている。出張するビジネスパーソンは、お金の出所が会社の経費であることに加え、価格よりも日程を優先する傾向が強く、航空会社にとっては最も「おいしい」顧客であった。ところがコロナ禍以降、利用者の飛行機の使い方が激変し、各社を困惑させている。

コロナ前の時代であれば、ビジネス客とレジャー客は明確に区別できた。出張の場合、週末には自宅に戻る必要があるため、休日をまたいだ往復にはなりにくい。日本に当てはめれば、木曜日に羽田をたち、札幌に1泊した後、金曜日に羽田に戻るといったパターンである。ところがコロナ禍をきっかけにこのパターンに当てはまらない乗客が増え、コロナが終息しても、その傾向が続いている。

従来の常識では行動が読めない旅行者たち

コロナ禍以後は、同じ木曜出発でも、帰りが日曜だったり、週明けの月曜になるケースも多いという。従来区分では週末を利用したレジャー客に見えるが、観光地ではない場所でも同様の日程が見られるので、そのカテゴリーには当てはまらない。2週間程度、特定の都市に滞在し、戻ってくるという旅行客も増えているとされるが、これも従来の常識では何をしているのかよく分からない。

旅行業界ではこうした旅行客の新しい行動様式について、ビジネスとレジャーの混在型と分析している。混在型と説明されてしまうと、本当にそんな旅行をする人が大勢いるのかと疑ってしまうが、こう考えれば分かりやすいだろう。

例えば週末に遠隔地で友人の結婚式があった場合、これまでなら金曜の夜、あるいは土曜の午前にたって、日曜に戻っていただろう。だが今はリモートでも仕事ができるので、家族と一緒に木曜の夜にたち、金曜日はホテルでリモートワークすればよい。夜には現地で家族と食事を楽しみ、週末に結婚式に出るといったスケジュールである。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story