コラム

超円安の時代:目安が1ドル150円となる理由、住宅は持ち家がいい理由

2022年10月07日(金)10時35分

221011p18_EYH_03.jpg

インフレ下での不動産取得は有利だが、住宅ローンを組む場合は金利上昇に注意が必要 KOKOUU/ISTOCK

外貨資産への転換が有利

こうした状況下で、家計はどのように対処すればよいのだろうか。

基本的に円安が進むということは、日本円の価値が下落することを意味しており、円だけで資産を運用するのは相対的に不利になる。

加えて、円安が進むと輸入物価の上昇を通じて国内物価にも上昇圧力がかかるため、インフレを誘発しやすい。現在、消費者物価指数の上昇率は2%台後半だが、このまま円安が進めば3%を超えてくる可能性は十分にある。

インフレ進行中に現金を保有していると、物価上昇分だけの価値を失うことになる。可能な限り、不動産や株式など収益が得られる資産に転換したほうが有利だ。今回は円安とインフレの同時進行なので、資産は日本円ベースではなくドルなど外貨ベースであることが望ましい。

このところ邦銀各行は外貨預金に力を入れており、一連の円安をきっかけに預金の一部をドルに移す人も増えてきた。また、政府の投資優遇税制制度である「NISA」や「つみたてNISA」においても、口座開設者の多くが日本株ではなくアメリカ株など外国株を買っている。

日本経済全体として見た場合、こうした動きが進みすぎると、さらに円安を招くリスクが懸念されるものの、個人レベルでは、海外ベースの資産を持つことは合理的選択と言える。

もっとも外貨預金はペイオフの対象ではないため、金融機関に何かあった場合、保護の対象にはならないので注意が必要だ。

住宅については、物価が継続的に上がる可能性が高いことを前提にすると、持ち家を取得したほうが有利になる。

だが、円安と物価上昇が同時に進むということは、長期的には金利も上昇することを意味している。不動産購入の資金を変動金利のローンで調達していた場合、仮に円安と物価上昇によって不動産価格が上がっても、利払い負担が増えてしまうため大きなメリットは得られない。逆に無理なローンを組んでいた場合には、金利上昇によって銀行への支払額が急増し、ローンの返済が滞るリスクもある。

円安と金利上昇が進む局面では、現金で不動産を購入するか、支払金利が変わらない固定ローンで資金を借りるのが安全策ということになる。

物価上昇が進むと、日々の買い物において節約する効果は限られる。全体の物価が上がっているので、代替商品を探しても、その商品も値上がりしている可能性が高いからだ。

ただ、物価上昇にはタイムラグがあり、高額商品ほど値上がりのタイミングは遅いのが一般的だ。家電や自動車など買い換えの必要がある商品については、早めに購入を決断することで支出総額を抑制できる。

円安とインフレが長期化した場合、最終的には副業などを通じて世帯収入を増やす努力も必要となってくるだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナで化学兵器使用を拡大、独情報機関

ビジネス

ドイツ鉱工業受注、5月は前月比-1.4% 反動で予

ワールド

中国、EU産ブランデーに最大34.9%の関税 5日

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story