コラム

東京23区「人口流出」の実態とは? 「一極集中の是正」報道のウソ

2022年03月08日(火)19時00分
東京マンション群

MICHAEL H/GETTY IMAGES

<テレワークの進展によって郊外に転居した人がいるのは確かだろうが、そうした「前向き」な理由での転出はむしろ少数派と見るべきだ>

東京23区が転出超過になったことが話題となっている。テレワークが普及し、都心から人が出ていく動きが加速しているとの解釈が一般的だが、統計をより細かく見ると、そうではない可能性が高い。筆者はかねてからテレワークを推奨してきた立場だが、願望が先走ってしまうと実態を見誤る。

総務省が発表した2021年の住民基本台帳の人口移動報告によると、東京23区の転出超過は1万4828人となり、現在の統計になってから初めて転出が転入を上回った。各種メディアには「東京一極集中の是正が進む」「テレワークの進展で田舎暮らしが現実に」といった見出しが並んだが、これは実態を表していない。

確かに23区は転出超過だが、東京都全体では5433人の転入超過。さらに東京圏に視野を広げると8万1699人の転入超過となっている。

つまり23区から人が出ていっただけで、首都圏全体では相変わらず地方から人を集めている状況に変化はない。さらに細かく統計を見ると、23区から転出している人の多くは、横浜や川崎、さいたま市、川口市など近隣都市に転居している。東京一極集中が是正されたのではなく、首都圏内での移動が増えたことが分かる。

最大の要因はコロナ危機による失業増加

世の中で指摘されているように、テレワークの進展によって郊外に転居した人がいるのは間違いないだろう。だが、それ以外にも都心から人が離れる要因はたくさんある。最も大きいのはコロナ危機による失業である。

東京近郊に実家があり、23区で単身生活をしている若年層は多い。感染拡大に伴う外出抑制で外食産業やアパレル産業は大打撃を受け、多くの労働者が仕事を失った。特に非正規労働者にそのシワ寄せが来ており、東京都における非正規雇用者数は19年との比較で7万4000人も減少している。単身での生活ができなくなり、実家に戻らざるを得なかった若年層はかなりの数に上るだろう。

東京都の事業者でテレワークを実施している比率は56.4%(21年12月時点)だが、週1日もしくは2日という事業者が過半数となっており、全面的に実施されているとは言い難い。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国大統領、中国国家主席と会談 両国関係「新たな段

ワールド

トランプ氏、対コロンビア軍事作戦を警告 「良い考え

ビジネス

台湾検察、東京エレク現法を追起訴 TSMC機密取得

ビジネス

英消費者向け融資、11月は2年ぶり大幅増 家計需要
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...強さを解放する鍵は「緊張」にあった
  • 2
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 3
    2026年の節目に問う 「めぐみの母がうらやましい」── 韓国拉致被害者家族が見る日韓の絶望的な差
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    野菜売り場は「必ず入り口付近」のスーパーマーケッ…
  • 7
    ベネズエラ攻撃、独裁者拘束、同国を「運営」表明...…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    スペイン首相、アメリカのベネズエラ攻撃を「国際法…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story