コラム

台湾・半導体TSMCの誘致が、日本経済の復活と賃上げをもたらす

2021年11月09日(火)18時12分

この手法は途上国的に見えるが、必ずしもそうとは言えない。著名IT企業を次々と国内に誘致し、労働生産性で世界1位を達成したアイルランドという事例があるからだ。

かつてアイルランドは景気低迷と失業問題に苦慮していたが、米インテルの工場建設をきっかけに半導体や製薬、ソフトウエアなど高度な製造業の誘致を推進。同時に徹底的なIT教育を推進し、優秀な労働者の育成を図った。その結果、多くの国民が高い賃金の仕事に就けるようになり、同国は欧州でも指折りの豊かな国となった。

同じ工場の誘致でも、教育政策とセットにすることで、より高い賃金が得られるという現実をアイルランドは示している。進出企業が獲得する利益は外国のものだが、労働者や取引企業に支払われる金額のほうが大きく、国内経済への貢献度は高い。

TSMC進出をきっかけに、日本は現実的な産業政策に全面的に舵を切るべきであり、これが実現すれば確実に賃金上昇をもたらすだろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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