コラム

「日本の医療崩壊」その危険性を示唆する、世界で断トツの「数値」

2021年01月20日(水)11時54分

日本の病院では、少ない看護師が多くの患者を担当するケースがあるので、これでは余裕がなくなるのも当然だ。疾患を抱えた国民が日本にだけ多いとは考えにくく、入院の必要性が低い患者まで受け入れている可能性(あるいは介護との連携が取れていない可能性)について考えざるを得ない。

コロナ患者の場合、感染対策の必要性から通常の2倍の従事者が必要となる。病院側の負荷が極めて大きいので、日常的に全く余裕がない病院の場合、患者を受け入れたくても受け入れられないというのが正直なところだろう。

もっともコロナ危機によって、一般疾患の患者数は減少している。人員が余剰となっている科目や他の病院などから従事者を派遣し、全体最適化を行うのは不可能ではないと思われる。だが医療行為というのは制約が厳しく、一般企業のように簡単には人員を融通できない。

結局のところ、医療制度を統括する政府が戦略的かつ実務的な対策に取り組まない限り、状況は改善しない。日本は制度設計が雑で、現場に過度な負担がかかるケースが多いが、医療もその1つと考えてよいだろう。

<本誌2021年1月19日発売号掲載>

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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