最新記事
BOOKS

アメリカでは女性の収入は男性より20%低い。なぜ女性は実際よりも能力を低く見積もられてしまうのか?

2025年6月16日(月)11時00分
キャティー・ケイ、クレア・シップマン
なぜ女性は自信が不足しているのか

なぜ女性は自信が不足しているのか(画像はイメージです)shutterstock/MAYA LAB

<女性たちは「努力は報われるもの」と信じて頑張り続ける傾向にある。しかし、どれだけ努力してもいまだ自信が持てない状況にあるのはなぜだろうか。この現象は、日本人女性に限った話ではないのである。>

本記事では、10年以上ロングセラーになっている『なぜ女は男のように自信をもてないのか』(CEメディアハウス)を参考に考えてみたい。

本書は、アメリカで活躍する女性たちへの取材だけでなく、科学的な側面からも女性の「自信のなさ」を明らかにし、アメリカで物議を醸し「自信」論争の発端となった一冊である。

収入が20%も低い女性たち

女性の自信不足は、単に成功者たちの秘話や、胸が痛くなるくらい馴染み深い話のなかだけに見られるのではない。一般的にも多くの事例が確認されていて、その数は増えている。

イギリスにある「リーダーシップ・マネジメント研究所」が2011年に女性たちに対して行なった調査がある。彼らは一連の質問事項のなかに「自分の仕事に対してどれだけ自信があるか」という質問を入れた。

結果は、半数の女性が「自分のパフォーマンスとキャリアに対して自己不信を抱いている」と答えていた。男性回答者で同様に答えたのはわずか3分の1以下だった。

カーネギーメロン大学の経済学の教授で、『そのひとことが言えたら...働く女性のための統合的交渉術』(北大路書房刊)の著者でもあるリンダ・バブコックは、アメリカの女性たちにも同じように自信が欠如しているという証拠を明確なデータで明らかにした。

彼女がビジネススクールの生徒たちとともに行なった研究のなかで、昇給の交渉をする男性は、女性の4倍も多いとわかったという。また、女性は交渉をしたとしても、交渉額は男性より30%も低かったという。

イギリスにあるマンチェスター・ビジネススクールの、マリリン・デイヴィッドソン教授は、問題は自信と期待の欠如から来ていると言う。

彼女は毎年、自分の生徒たちに、「卒業してから5年後、自分がどの程度の収入を得ていると思うか」、また「自分にふさわしい収入はいくらだと思うか」と質問している。

「7年ほど続けていますが、毎年、男子学生と女子学生の答えには大きな差があります」と彼女は言った。「男子学生が予想する収入は、女子学生よりも大幅に高く、『自分にふさわしい収入がいくらだと思うか』に対する答えでも、男女差はとても大きいです」。

デイヴィッドソン教授曰く、男性は平均で年収8万ドル(約660万円)くらいが自分にふさわしいと考え、女性は6400ドル(約530万円)くらいだと考えているとのこと。その差、16000ドルだ。

この数字には愕然とした。デイヴィッドソン教授の発見が現実に意味することは、女性は自分の価値を、男性が自分にあると信じている価値よりも、事実上20%も低く見積もっているということなのだ。

ビジネス
暮らしの安全・安心は、事件になる前に守る時代へ。...JCBと連携し、新たな防犯インフラを築く「ヴァンガードスミス」の挑戦。
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中