コラム

日本の高齢者のITスキルが、世界の中でも著しく低い理由

2020年01月22日(水)12時31分

ALENGO/ISTOCKPHOTO

<「もう年寄りだからパソコンは苦手」は、世界の常識ではない>

NHK次期会長のみずほフィナンシャルグループ名誉顧問・前田晃伸氏(75)が、パソコンを持っておらず、インターネットも接続していないと発言したことが話題になっている。

NHKは今年からネット常時同時配信に乗り出すことが決まっており、就任会見では記者から関連の質問が集中したが、前田氏は「実はインターネットとかパソコン持っていないんですが......」「相当古い人間で、常時配信がどんなものかも分かっていない。1月までもうちょっと勉強させてほしい」と発言。就任までの間に勉強させてほしいと述べるにとどまった。

今後のNHKにとってネット配信は極めて重要なサービスの1つだが、組織トップがそのサービスについて知見を持っていないということでは、一部から不安視する声が出るのもやむを得ないだろう。もっとも経営者は経営能力があればよく、必ずしもITスキルが必須というわけではない。

だが、筆者が引っ掛かったのは、前田氏がITに疎いことそのものではなく、その理由として、自身の年齢を引き合いに出したことである。

日本では年齢が上がるにつれてITに疎くなるというのは、当たり前のことと受け止められているが、諸外国では必ずしもそうとは限らない。年齢が高くなるとITスキルが下がるのは、どの国にも見られる傾向ではあるが、日本の場合、ITスキルと年齢の相関が特に高いという特徴が見られるのだ。

OECD(経済協力開発機構)によると、日本人のITを活用した問題解決能力は、25〜44歳の間ではOECD平均をそれなりに上回っているが、50歳を超えると差が縮まり始め、60歳以上では平均値を下回る。つまり諸外国と比較すると日本では高齢者のITスキル低下が特に目立つ。

問題の根源は教育環境にある?

実はこの傾向は高齢者だけではなく、若年層においても同じ傾向が見て取れる。諸外国では16~34歳までのITスキルはほぼ同レベルなのだが、日本人では24歳以下になると急激に低下している。日本では高齢者に加えて若者のITスキルも低いということになるわけだが、一連の結果は日本の教育環境と関係している可能性が高い。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EU、中国のレアアース規制強化でG7と提携模索

ビジネス

独ZEW景気期待指数、10月上昇も市場予想下回る 

ワールド

ICC、前フィリピン大統領の「麻薬戦争」事案からカ

ワールド

EUの「ドローンの壁」構想、欧州全域に拡大へ=関係
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 8
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story