コラム

相続税対策のアパート建設に急ブレーキ。将来の時限爆弾になる可能性も

2018年02月06日(火)11時25分

写真はイメージです。 fotolism_thai-iStock.

<活況を呈したアパートローン、本当の恐怖は忘れた頃にやってくる...>

需要をはるかに超えるペースで建設が続いていた賃貸用アパートに急ブレーキがかかっている。建設バブルはこれで終了となる可能性が高いが、問題はむしろこれからである。賃貸需要がない地域に相続税対策で建てられたアパートは近い将来、空室に苦しむ可能性が高い。場合によってはあらたな不良債権問題のきっかけとなるかもしれない。

まるで不動産会社のように銀行がアパート建設を提案

国土交通省が発表した12月の住宅着工戸数によると、貸家(主にアパート)の建設は前年同月比で3.0%減と7カ月連続のマイナスを記録した。季節調整済みの着工件数(年換算)は、前月比で9.8%という大幅減だった。

ここ数年、アパート建設は賃貸需要をはるかに上回るペースで増加しており、特に2016年は前年同月比で2ケタ台の伸びが続いていた。税金対策からアパート建設を急ぐ土地所有者が増えたことに加え、マイナス金利政策による収益低下に苦しむ銀行が、こぞってアパートローンを強化したことが建設に拍車をかけた。

融資を伸ばしたい銀行が、土地所有者に対してまるで不動産会社のようにアパート建設を提案したり、場合によっては、不動産会社と銀行が組むようなケースもあったといわれる。ここまで来ると、過剰融資というレベルに入ってくるだろう。

あまりの過熱ぶりに金融庁が危機感を抱き、昨年から事実上の行政指導に乗り出したことで、融資を控える銀行が増加。着工件数も頭打ちになった。

バブル的な建設ラッシュはこれで一段落ということになるが、これで過剰アパート問題が解決されるわけではない。むしろ問題が深刻化するのは数年後のことである。

事態はゆっくりと深刻化する

先にも述べたように、ここ数年のアパート建設ブームは、相続税対策という側面があり、場所によっては、賃貸需要の推移を考えずに大量のアパートが建設された。

日本はこれから人口減少が本格化するが、人口が減るということは、同じ状態のままで人の数だけが減ることを意味していない。人は経済活動を行って生活しているので、一定以上の人がいないと経済圏を維持することができず、より便利な場所に向かって人が移動することになる。人口の減少は、同時に人口動態の変化をもたらすのだ。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

バフェット氏、バークシャーCEOを年末に退任 後任

ビジネス

OPECプラス、6月日量41.1万バレル増産で合意

ビジネス

日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 8
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 9
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 10
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story