コラム

日本でも世界でも、公共事業で整備された近代インフラは老朽化でもう限界

2025年02月14日(金)17時40分

各地のインフラが緊急の修繕を必要としている(画像はイメージ写真) photoAC

<高度成長期に整備された日本各地の近代インフラはとっくに老朽化している>

1月28日に埼玉県八潮市で道路が陥没し、トラックが落ちて運転手はまだ見つかっていない。下水管が壊れて汚水が道路の下の土を洗い流していたとされるが、この辺りは2つの川に挟まれた地域で、古い利根川にも近い。地盤に問題があるのか、材質劣化によるものなのか。コンクリート製の下水管が簡単に壊れては、たまったものでない。

地下の下水システムの初歩的なものはメソポタミアの頃からあったが、中世まではどこも「オープンエア」だった。古都・奈良には「あをによし」という優雅な枕詞がついているが、実際は下水代わりの大和川水系がよく詰まって「ああにおい」だったようだ。中世ヨーロッパの都市も、街路の溝を汚水が流れるシステムだった。


筆者の幼少期でもトイレはくみ取り式が一般で、近くの農家がリヤカーに桶(おけ)を載せて回収にやって来た。道端には「肥だめ」という怖い穴がいくつもあり、うっかり落ちた人の話は何度も聞いた。余ったものは「おわい船」に積まれ、海に投棄された。

ヨーロッパで地下の下水が整い始めたのは、産業革命後の19世紀半ば以降だ。華のパリでも、地下の下水システムを整えたのは19世紀半ば。ビクトル・ユゴーの『ああ無情』では、主人公ジャン・バルジャンが青年マリウスを担いで下水道をさまよったが、この場面の舞台である1832年のパリではそれはできなかったはずなのだ。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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