コラム

「またトラ」でウクライナ停戦が成立すれば、北朝鮮兵が平和維持軍に?

2024年11月12日(火)16時00分

アメリカなどの論壇は、「もしトラ」を想定し、その場合の停戦の在り方を議論してきた。いろいろあるし、どれも今のところ絵に描いた餅だが、例えば10月28日付フィナンシャル・タイムズは、停戦した上で戦線一帯を非武装地帯とし、その周辺のロシア、ウクライナ領の双方に「自治地域」を創設することを提案している。

政権最大のリスクは金融恐慌

このようなやり方が、すんなり通るとは思えない。ウクライナでは極右勢力の抵抗が強まるだろう。ロシア領内への攻撃、軍事クーデターもあり得る。もし停戦が成立すれば、これまでは戦争中だからということで延期されてきた大統領選挙が行われ、支持率の落ちているゼレンスキーは交代だ。もっとも、彼に代わることのできる有力な勢力は見えないし、ウクライナ国内情勢は荒れるかもしれない。


それでも、西側が停戦を望んでいることは明らかだ。そこで、北朝鮮兵を平和維持軍として境界のロシア側に駐留させてはどうか。ロシアの実質的な傭兵という屈辱的な条件で犬死にするのとは大違い。金正恩(キム・ジョンウン)総書記も、ミサイル技術や食料品との引き換えに人民の命を差し出したという後世の非難から逃れることができる。ただそのためには、朝鮮半島で核不使用を宣言するなど、何らかの「代償」を払わなければ、西側の同意は得られないが。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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