コラム

日本が求められている「人権外交」は本当に効果的なのか

2021年04月24日(土)15時12分

だからアジア諸国での人権・民主化問題については、日本は現地政府に声明などで大々的に圧力をかけるよりは(それは逆効果になりやすい)内々自重を申し入れて解決策を探る。と同時に、G7や国連などの多国間協議の場で態度を表明していくのが限度だろう。

旧ソ連諸国、中近東諸国では民主化運動が時折激化する。これらの国で自由と民主主義を求めるインテリは優秀だが、多くの場合社会から浮き上がっている。単に利権やポストを狙うだけの者もいる。

そのような人たちは大衆をうまく扇動して政権転覆に成功したとしても、自分が政権を握ると途端に専制主義化して、得た権益を守るのだ。悪くすると、外部からの介入で内戦になり、700万人弱もの避難民を生んだシリアのようになる。

他国での人権・民主化問題には、その国の人たちの安全と生活をまず第一に考えて、慎重に対応するのが責任ある態度だろうと思う。

そして他国のことをあげつらうよりも自国での人権や民主主義をもっと磨いて、途上国の人々に「自分たちもああなりたい」と思わせることが、先進諸国の人間がまずやるべきことだろう。

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河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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