コラム

12歳の子供に二次性徴抑制剤も...進歩派の極端すぎる手法と「崇高な大義による悪行」とは?

2025年05月08日(木)18時34分

トランスジェンダーの権利擁護活動家も、その代表的な例だ。

彼らは、自分たちの見解への反対が大きいほど燃え上がるようで、あたかも反対者が多ければ多いほど、過激な手段に出て敵を攻撃する権利が与えられるように捉えるらしい。


彼らは反対派の気を引くためにわざと法外な見解を打ち出し、それによって「進歩の敵」が大勢いることを「証明」し、だからこそ必然的にさらなる攻撃的なやり方を正当化する......というふうに狙ってやっているのではないかと、僕は時々疑いの目で見てしまう。四方を無知無関心な者たちに囲まれながら、「大胆な少数派」として果敢に戦うことで、彼らが目的意識を高めているだろうことは容易に想像できる。

でも僕が理解できないのは、彼らが達成不可能なほどの非現実的な目標のために、いかに達成可能な目標を犠牲にしているか、という点だ。

「トランス女性は女性である」というのがあたかも簡単なことであるかのように主張し、誰であれ睾丸を持つ「彼女」が「自己認識」に基づいて決定したその瞬間から、生物学的な女性と全く同じように扱われるべきだと叫んで、彼らは大衆の大多数が抱く本能的な感覚に戦いを挑む。

それに対して、インターセックス(男女の特徴を併せ持つこと)は存在しますよ、誰もが生まれながらの性別に満足しているわけではないのですよ、そのためには社会や大衆が認め、思いやり、配慮した行動を取る必要がありますよ、というのなら、非常に簡単に、広く受け入れられることができるだろうに。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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