コラム

2025年、ついにオアシス再結成......その真実を語ろう

2025年01月08日(水)17時00分

さらに、彼らは(僕と同じく)アイルランド系。同胞に対して申し訳ないが、アイルランド系は家族の確執をよく起こしがちだ。大規模な結婚式があったと聞けば、僕たちは冗談で「で、けんかはあった?」と聞く。

ともすると、オアシスで普通じゃないところは、兄弟が仲たがいしたことではなく、その前に初期メンバーの3人を脱退させたことと、交代した1人も辞めさせたことかもしれない。


北部人はやっぱりけんか好きなだけだろう、という結論になるかもしれない(同じ時代を代表した他の2つのマンチェスターのバンド、ザ・スミスとストーン・ローゼスも非友好的な解散をしたことを付け加えておこう)。

ギャラガー兄弟の確執には興味深い力学が働いた。それを乗り越えるに値する莫大な金銭的動機があったのだ。実際、不和が長引くほどその金額は膨れ上がった。オアシスが15年前に解散したという事実は再結成ツアーに巨大な需要があることを意味していた。

今回の感動的な和解は、ノエル・ギャラガーが2000万㍀(約39億円)の離婚請求に直面しているさなかに起こったことは注目されている(モンティ・パイソンのコメディアン、ジョン・クリーズの悪名高い慰謝料ツアーを思い起こす人もいるだろう)。

チケット争奪戦で詐欺も発生

>

再結成のビッグニュースの後には、コンサートチケット争奪戦のビッグニュースも続いた。誰もかれもが、「Be Here Now(今、ここ)」ならぬBe There Then(その時、そこ)に行きたがっているかのようだ。

サイトで何時間も待機した挙げ句、順番が回ってきた瞬間に回線が切れた、などといったシステムの過重負荷でありがちなトラブルも起こった。

チケット価格が定価より数百ポンドもつり上がることを意味する「ダイナミック・プライシング」にも怒りの声が上がった。そして、必死な上にだまされやすい人々に詐欺師が架空チケットを売りつけるという、ありがちな詐欺事件も発生した。

もちろん大きな謎は、なぜオアシスがここまで人気があるのかということだ。彼らは最も独創的なバンドというわけではない(彼ら自身でさえ、『ステンディング・オン・ザ・ショルダー・オブ・ジャイアンツ』のアルバム名でそれを認めている。要は、自分の業績は巨人のごとき先人たちの業績の上に乗って成し得たことだという意味だ)。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story