最新記事
音楽

オアシス再結成で露わになる搾取...「ダイナミック・プライシング」の闇

Ticket Fights

2024年10月3日(木)19時20分
イモジェン・ウェストナイツ(作家、ジャーナリスト)
再結成されたオアシスのチケットをめぐって、オンラインでは激しい争奪戦が展開された OLI SCARFF/AFPーGETTY IMAGESーSLATE

再結成されたオアシスのチケットをめぐって、オンラインでは激しい争奪戦が展開された OLI SCARFF/AFPーGETTY IMAGESーSLATE

<販売サイトの順番待ちをしている間に価格が高騰する、ダイナミック・プライシングという搾取>

ノエル・ギャラガーと弟リアムが15年ぶりにロックバンド「オアシス」を再結成すると発表してからわずか数時間後、ある人物がX(旧ツイッター)にこんな投稿をした。

〈オアシスの再結成を15年も待っていたのに、ただ「ワンダーウォール」を生で聴きたいだけのストックポート在住21歳のクロエにチケット争いで負けてしまった!〉


この投稿はある意味、単なる「ゲートキーピング(特定のファン層がその他の人々を排除する行為)」に軽い女性嫌悪が交じった程度のものかもしれない。でも私は、思わずうなってしまった。またかよ、やり切れないな......。

再結成されたオアシスのチケット需要がとんでもなく高まるのは、分かり切っていた。オアシスはかつてイギリスで最高の人気を誇ったロックバンドだ。後期の作品については評価が分かれるが、最初の2枚のアルバムは90年代のオルタナティブ・ロックのムーブメントである「ブリットポップ」の立ち上げに大きく貢献した。

だが2009年のパリ公演の舞台裏でノエルとリアムが大げんか。ノエルが切れてオアシスは解散した。でも彼らの対立はそれ自体が一種のエンターテインメントで、ある意味、見ていて楽しかった。

90年代の私はまだ子供だったから、私の記憶に残っているオアシスの曲は00年代半ばに、もっぱらラジオで聴いたものくらいだ。

だから正直なところ、冒頭のようなツイートでオアシスに若いファンがいることを知って少し驚いたが、実際のところ若いファンは多いようだ。単に「30年前の曲だから」という理由で特別な価値を感じているだけのようにも思えるが、あらゆる層や世代の人々がオアシス再結成と聞いて舞い上がったのは事実らしい。

一方で大勢の人が憤りも感じている。当然だろう。なにしろ近年、人気歌手のツアーのチケットを手に入れるのはますます困難、そして不快な体験になっている。

3万人が「順番待ち」

オアシスが再結成ツアーを発表し、そのチケットの一般販売が始まったのは8月31日のこと。すごかった。私はパブにいたのだが、目の前に伏し目がちでスマートフォンを見つめている女性が立っていた。肩越しに画面を見ると、チケット購入の「オンライン行列」に3万人近くが並んでいると表示されていた。

友人の友人が何時間も待った末に「行列」からはじき出されて諦めたという話も聞いた。英ガーディアン紙のある記者は、チケット4枚で1500ポンド(約28万円)も払う羽目になったと嘆いていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

メキシコ大統領、キューバへの石油供給停止を否定せず

ビジネス

三井物、オマーンの陸上油・ガス田権益の一部売却 2

ワールド

ドイツ、同盟崩壊で新たなパートナー探す必要=経済相

ワールド

トランプ氏「民主党勝てば国がつぶれる」、激戦アイオ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化はなぜ不可逆なのか
  • 3
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 4
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    「恐ろしい...」キリバスの孤島で「体が制御不能」に…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    生活保護と医療保険、外国人「乱用」の真実
  • 10
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 9
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 10
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中