コラム

イギリスのワクチン「トップ転落」と3回目接種

2021年12月06日(月)14時15分

ロンドンのショッピングセンターの一画に設けられたワクチンの接種会場 Henry Nicholls-REUTERS

<世界をリードしていたはずのイギリスの新型コロナウイルスワクチン接種は、今や他国に追いつかれ・追い越され気味。そんななかスピードアップする3回目接種にはいろいろと問題が>

イギリスの新型コロナワクチン接種はここ半年で、「見事な進み具合」から「もう少し頑張りましょう」という認識に変化している。今年春の時点では、イギリスは他の先進国と比べてかなり先を走っていた。でも夏が過ぎるころにはそのリードを生かせなくなり、アイルランドやポルトガル、スペインなど数々のヨーロッパの国がほぼイギリスに「追いついて」きている。オミクロン株が出現もしないうちから感染再拡大で規制を強化しつつあったフランスやドイツ、オーストリアと比べても、イギリスは大きくリードしてはいないようだ。

イギリスは日本よりも数カ月は先を行っていたはずだったが、今では「2回接種」の接種率で8ポイント遅れを取っている。まさに日本の「大逆転」だろう。国と国との競争ではないということは、十分承知している。僕が言いたいのは、イギリスの見事なワクチン接種に対する初期の楽観論が行き過ぎだったということだ。

一方、僕は3回目接種(いわゆるブースター接種)を受けた――2回目接種からちょうど6カ月後だ。それはちょっとしたタナボタだった。僕は「接種予約可能になりました」とのテキストメールを受け取った。さらに、予約不要の接種会場もあると記載されていて、時間にルーズなタイプの僕はその言葉に引かれた。でも、メールにはリンク先が表示されていなかったので、ネット検索しなければならなかった。すると、自宅から10分の駐車場に「期間限定」ワクチン接種会場が、ちょうど翌日、たった1日だけ設けられるということを知った。

重症者=未接種者はもはや常識なのに

このやり方はシンプルで迅速かもしれないが、僕は会場でスタッフに「建設的批判」を述べてみた。僕が昨夜遅くに思い付きでNHSのウエブサイトをチェックしていなければ、今回の接種機会を簡単に逃してしまっただろう、もっと広く周知すればより効果があっただろうに、と。接種会場となるバスは毎日移動しており、その後の数日は、僕からすればあまり便利ではない場所に会場が次々と移ることになっていた。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P小幅安、FOMC結果待ち

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、雇用市場に依然底堅さ

ビジネス

米NEC委員長「利下げの余地十分」、FRBの政治介

ワールド

ウクライナ、和平計画の「修正版」を近く米国に提示へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story