コラム

愛してやまないBBCの、受信料制度は問題だらけ

2020年03月11日(水)19時00分

実を言えば、僕はBBCに恨みがある。初めて所有した家に引っ越したとき、BBCは受信料の「脅迫状」をしつこく送り付けてきた。まだ屋根にアンテナが立っていなかったから、BBCを見られるはずはない。だから受信料を払う必要もないはずだ。

それなのにBBCは、僕の了承なしに家の中を調べることができると言い放っていた。かなりの罰金を請求されたり、訴えられたりする恐れもあった。こちらから事情を説明しても、督促状は止まらなかった。社会的に弱い立場の人や本当に貧しい人が、あんな目に遭ったら気の毒だ。

電気料金を支払わなかったら民事問題で済むが、BBCの受信料を払わなかったら犯罪になる。それだけでもひどいものだが、事態は女性に対して格段に厳しい。不払いで訴追される人の7割以上が女性だ。女性による犯罪の種類ではこれが最も多く、前科のある女性の約3割がBBC受信料不払いの罪なのだ。女性は男性より所得が低いことや、調査員が来るときに家にいるのが女性であることが多いことも背景にある。

BBCは偽善者のそしりを免れない。強引に既得権を主張するようでは、高い見識のある進歩的な報道機関として重責を果たすことはできない。僕は一人のテレビファンとしてBBCの存続を願いながら、一人の市民としてBBCに変革を望む。

<本誌2020年3月17日号掲載>

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2020年3月17日号(3月10日発売)は「感染症VS人類」特集。ペスト、スペイン風邪、エボラ出血熱......。「見えない敵」との戦いの歴史に学ぶ新型コロナウイルスへの対処法。世界は、日本は、いま何をすべきか。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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