コラム

ヘンリー王子婚約、イギリス一般男性の本音は

2017年12月22日(金)16時00分

ウィリアムとヘンリーは「一緒にビールを飲みたい」2人 Neil Hall-REUTERS

<多くのイギリス人にとってヘンリー王子婚約のニュースは、公人というより、親しみを感じて幸せを願うような人の結婚話>

概して僕は英王室支持者で、その理由の1つはイギリス王室メンバーが強い義務感を持っているように感じられることだ。エリザベス女王はその紛れもない例であり、91歳にしていまだに君主を務めているのだが、若手の王室メンバーも立派な働きをしている。

ウィリアム王子は今年まで救急ヘリコプター操縦士を続けてきた。退職したくはなかったようだが、女王の年齢からいって彼(とチャールズ皇太子)が女王の公務を今まで以上に引き受けるべきだと判断した。明らかなことだが、ウィリアムはカネを稼ぐために操縦士の仕事をする必要はない。

ヘンリー王子はイギリス陸軍に務め、アフガニスタンにも2回派遣された。1度目の時はメディアに任地が明かされてしまったことで、任務切り上げを余儀なくされた。ヘンリーはタリバンの標的にされる恐れがあり、帰国せざるをえなかったのだ。彼は帰りたくなかったらしい。帰国する理由は、自分がとどまれば彼の部隊、つまり仲間の兵士たちが危険にさらされる恐れがあるからだった。

戦闘地帯で従軍した経験から、ヘンリーは傷病兵らのための国際スポーツ大会「インビクタス・ゲーム」創設に関わることになった。戦場で重い傷を負った多くの兵士たちが、この大会によって目的意識やプライドを持つことができたと語っている。

ウィリアムとヘンリー、それにキャサリン妃は摂食障害や鬱病と言ったメンタルヘルスの問題でも、とても積極的に活動している。こうした問題は今も「難しい」ものであり、声を上げにくい話題だとされている。彼ら王室メンバーは、自身の心の問題を語ってメンタルヘルスに付きまとう恥の意識を取り払うことに助力し、タブーを破る役目を果たした。

だから僕は、彼らが価値あることをするために自分の立場をうまく利用するのは、もっともなことだと思う。

神秘性は損なわず壁を打ち破った

ウィリアムとヘンリーについて言えるもう1つのことは、彼らが僕の呼ぶところの「ビールテスト」にパスしていることだ。つまり、平均的な道行くイギリス人の大半が、彼らとなら一緒にビールを飲みたいと思う、ということだ。それは、光栄だからというより、彼らと飲んだら楽しそうだからだろう。彼らは話せる人々だろうし、よく笑いそうだし、2人で仲のいい様子を見せたりからかい合ったりしそうだ(友人をからかったりそれを大目にみたりできることは、イギリス人男性にとって欠かせない能力だ)。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

モルガンSも米利下げ予想、12月に0.25% 据え

ワールド

トランプ氏に「FIFA平和賞」、W杯抽選会で発表

ビジネス

9月PCE価格、前年比2.8%上昇・前月比0.3%

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談へ W杯
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 6
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story