可処分所得の減少と生活コストの上昇で「赤字家計」の世帯が増えている

1998年以降、20代世帯の可処分所得は伸びておらず微減している photoAC
<特に20代では、この四半世紀で赤字世帯の割合が10ポイント近くも増加している>
国民の間で生活苦が広がっている。その原因として収入の減少ばかりが言われがちだが、支出の増加にも目を向けなければならない。物価高騰により、米の価格が2年前の3倍近くに跳ね上がっている状況ではなおのことだ。
地方では収入は低いが、生活にかかるコストは安い。一方、都市部では、収入は多く得られるものの生活費は高くつく。生活にどれほどゆとりがあるかは、収入と支出の差し引き勘定で決まる。
収入は、税金を引いた後の可処分所得で見た方が分かりやすい。厚労省の『国民生活基礎調査』に可処分所得の分布が出ているが、1998年のデータで中央値を計算すると、20代の世帯は229万円となる。月の家計支出の中央値は16万円で、年額にすると192万円。多少の余裕はあったようだ。
しかし現在は違う。2024年の中央値を出して、線でつないだグラフにすると<図1>のようになる。
可処分所得が変わらない(微減)にもかかわらず、年間の支出額は大きく増えていて、両者が接近してしまっている。自由に使えるお金の減少、増える支出――今の若い世帯は、ギリギリの暮らしをしているようだ。他の年代も同じだが、若い世帯はとりわけ苦しい。
可処分所得が増えず微減の傾向すらあるのは、重い税負担がのしかかっているためだ。2022年のデータによると、20代の世帯は、稼ぎの3分の1を税金で持っていかれている(「この四半世紀でほぼ倍増した若年世代の税負担率」2023年8月16日、本サイト)。支出が増えているのは物価高のせいで、家賃等の基礎経費も上がっているからだろう。消費支出には奨学金返済は含まれていないが、これを含めたら支出が収入を上回る「赤字」の世帯が多くなるのは確実だろう。