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日本企業、アフリカ成長にらみビジネスアピール TICADエキスポ開幕

2025年08月21日(木)10時37分

 8月20日、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の関連イベントとして、企業などが出展するビジネスエキスポが横浜市で開幕した。写真はTICADの集合写真。代表撮影(2025年 ロイター)

Kentaro Okasaka

[横浜市 20日 ロイター] - 第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の関連イベントとして、企業などが出展するビジネスエキスポが20日、横浜市で開幕した。人口減で縮小する国内市場を尻目に、アフリカの経済成長と人口増が今後も続くとにらんで事業拡大を図る企業が構想を披露する場となる。

TICADはアフリカの開発をテーマとする日本政府主導の国際会議で、1993年が初回。最近は3年おきに開催されている。石破茂首相は19日、記者団に「(アフリカの)人的資源や物的資源を活力として生かしながら日本の成長、世界の繁栄にどうやってつなげていくかということ(が重要)だ」と指摘。「国際社会で存在感が高まっているアフリカとの連携はさらに密にしていく必要がある」と語った。

アフリカ54カ国の人口は現時点で約15億人だが、2050年には約25億人に迫り、世界人口の4分の1を占めると予測され「最後のフロンティア」と呼ばれる。日本からの直接投資残高は昨年末時点で1兆4232億円。米国向けの約120兆円とは比較にならないが、前年から24.7%拡大しており、金融・保険分野への投資も増えている。

出展企業の一つ、豊田通商とアフリカの取引は1922年の綿花輸入以来、1世紀にわたる。自動車輸出・販売を展開してきたほか、英国商社から自動車事業を買収したり、フランス商社大手CFAOを傘下に収めたりして現地の事業を拡大してきた。現在はショッピングモールやスーパーマーケットも展開。最近はユニ・チャームと協業し、ケニアでプレミアム生理用ナプキンの販売を始め、事業拡大の本格化をにらんだ合弁会社設立も進めている。同社のアフリカ担当者は展示ブースで「今回のTICAD9で、TICAD8の25件を上回るMOU(覚書)をアフリカ側と締結する」と意気込んだ。

日本の海運会社として初めて1926年に日本とアフリカ東部を結ぶ定期航路を開設した商船三井は南アフリカ、モザンビーク、ケニア、モーリシャスに拠点を構え、海上輸送にとどまらず陸上輸送や倉庫事業、スタートアップ投資にも乗り出している。また、トルコ企業との合弁で洋上での発電船によるLNG(液化天然ガス)発電事業をセネガル沖で展開。陸上にLNG施設がない国でも初期投資を抑え、環境負荷の低いLNG発電による電力を短期間で供給できるメリットがある。

一方、日本よりもアフリカに近いインドに拠点を持つ企業が、その地理的長所を生かしアフリカに事業展開を進める動きもある。

ダイキン工業は、経済発展や都市化で空調の普及が見込まれるアフリカで、圧縮機の回転速度を的確に制御することで消費電力を約50%削減できるインバーターエアコンの販売拡大を目指す。ナイジェリアやアルジェリアではインドから空調機の部品を調達し、簡易な組み立て工程のみの現地生産も始めている。現地職業訓練校と連携した研修プログラムを通じて空調の技術人材育成にも取り組んでいる。

スズキは、米国や中国の四輪事業から撤退しており、製造拠点のあるインドからアフリカ全体への輸出拡大を図る。同社は「現在輸出している先も含め、インド向けの仕様はアフリカでも使いやすいという評価を受けているので、インド向けに開発したモデルを活用しながらアフリカでのシェア開拓を進めていく」としている。担当者は出展ブースでロイターの取材に「例えば南アフリカは『次のインド』と言われるほど成長しており、非常に重要な市場だ」と語った。

石破首相は20日、横浜市内で開かれたフォーラムのあいさつで「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」構想を提唱、地域圏の連結性を強化し「自由で公正な経済圏の構築を図る」と述べた。ダイキンとスズキを挙げ「アフリカの若者に技術やノウハウを提供し、地域社会の自律に貢献している」とし、今後、インドのモディ首相とも議論して同構想を地域全体の取り組みにしていきたいとの意向を示した。

エキスポを主催した日本貿易振興機構(ジェトロ)の石黒憲彦理事長は最近のロイターのインタビューで、このところ中国の投資先としての人気が陰り、米国の人気が上がってきていたものの、トランプ政権の関税政策を踏まえ「米国一辺倒もダメだな、と改めて(投資や進出先を)多角化することの重要性を日本企業は痛感したと思う」と指摘。「そういう意味ではニューフロンティアを求めて、またいろんなところに多角的にやってかなければいけないというのがレッスン(教訓)になる」と話している。

*写真キャプションの余計な字句を削除しました。

ロイター
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