コラム

ヘンリー王子婚約、イギリス一般男性の本音は

2017年12月22日(金)16時00分

ほんの1世代前の英王室はむしろ堅苦しくて近寄りがたいイメージだったことを思えば、これはなかなかの成果といえるだろう。この若い王子たちは、王室の神秘性は損なうことなく、その壁を打ち破ろうと努力してきたように見える。

僕は王室に関して、まさに気にかけていることがある。たまたまその家に生まれたからというだけの理由で、僕たちがある1つの家族を他の人々より上の身分に据えることは、明らかにおかしいし時代遅れなことだ。もしも王位継承で国民に投票権があるとしたら、エリザベス女王の次はチャールズを抜かしてウィリアムに「1世代飛ばすべきでは」などという議論を時々耳にするが、それにしたって民主的な制度だとは言えないだろう。

時に僕は、例えばロンドンオリンピックで王室が素晴らしい「支援を果たした」などと繰り返し言われている様子を見ると、王室への賛辞がちょっといきすぎじゃないかと思えることもある。一般国民がどうあがいてもチケットを取れないような花形競技の会場に、彼らはたびたび姿を見せていたからだ。

それに、いつも勤勉に務めを果たしているから、彼らが信じ難いほど裕福で信じ難いほどの特権に恵まれていることはあまり注目されないようになっている(他にも勤勉に働いている人はたくさんいるが、彼らは宮殿には住んでいない......)。

でもそんな僕の懸念も、王室への見方そのものを覆すほどではない。僕の見るかぎり君主制はうまく機能しているし、王室メンバーが偉そうに特権を振りかざしていないのがその大きな理由だろう。彼らは「労せずして得られる」地位を「勤勉に働いて得ている」ようなものだ。

ヘンリー王子がアメリカの女優メーガン・マークルと婚約したことについてどう思うかと、僕は何回か聞かれることがあった。たぶん質問した人は、このテーマについて何か深い考察を期待しているだろう。でも僕が一番強く感じたのは、「彼にとってよかったな」ということ(そして、彼にビールをおごりたい気分になった)。僕の言いたいことはつまり、多くのイギリス人にとって彼は、その結婚が国家的関心を呼ぶような公人であるというよりむしろ、僕たちが親しみを感じ、幸せを願うような人物である、ということだ。


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png
プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏関連資料、司法省サイトから削除か エプス

ワールド

北朝鮮、日本の核兵器への野心「徹底抑止」すべき=K

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ

ワールド

アングル:トランプ政権で職を去った元米政府職員、「
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story