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中国とドイツの関係悪化、EUの対中戦略の根本変化...なぜ台湾問題は欧州をここまで突き動かすのか?
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相(5月13日、ベルリン) EUS-Nachrichten-Shutterstock
<緊迫する中国・EU関係と台湾を巡る動きが、欧州の対中戦略を根本から揺さぶっている>
中国と欧州連合(EU)との関係が緊張を増している。その中で特にドイツとの摩擦が際立っている。
ドイツでは、メルツ政権発足から半年経つが、首相はもとより外相すらまだ北京を訪問していない。
このことは2024年までの長い間、中国がドイツの最大の貿易相手だったことを考えると、驚くべき変化である。
本来なら、9月26日にヨハン・ワーデフール独外相が北京を2日間訪問する予定だったが、10月24日に正式にキャンセルされた。
ドイツ外務省は、正式には「延期である」と言う一方で、新たな日程は決まっていない上に、中国側は王毅外相との会談以外、予定されていた他の会談を何一つ確約していなかったと明かした。
独外相は、8月には既に日本を訪れて日独の連帯協力を強調したことを思うと、実に対照的である。
欧州を訪問して協力を呼びかける台湾の大物政治家たち
同時並行して、台湾問題も緊迫化している。
台湾外務省は、11月5日に「欧州タスクフォース」を設置したと発表。欧州への働きかけを増幅させている。
11月7日、台湾の蕭美琴副総統が外相と共にブリュッセルを訪問。欧州議会で演説し、「台湾海峡の平和は世界の安定にとって重要だ」と訴えた。欧日米などの議員で構成される「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」の年次サミットでの演説だ。聴衆はEU議員だけではなく、複数の大陸から集まっていた。
副総統の登場は、欧州に到着するまで秘密にされており、サプライズの演説であった。驚いた中国のEU代表部は「『台湾独立』の主要人物を議会に入れ、分裂活動を認めたことに断固反対する」と厳しい非難をした。
これに先立って蔡英文前総統が、「ベルリン自由会議」で講演するために同地を訪問している。訪独の目的は「台湾とドイツ、そして欧州の志を同じくする民主主義諸国との協力・交流深化に寄与すること」。
前総統は流暢な英語を話し、副総統は元駐米大使である。二人の女性は影響力の高い人物だ。
中国と台湾との定期対話メカニズムは、2012年に蔡英文氏が総統に就任して以来、断絶している。
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