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中国とドイツの関係悪化、EUの対中戦略の根本変化...なぜ台湾問題は欧州をここまで突き動かすのか?
11月4日に王毅外相とワーデフール外相が電話会談した。ドイツ側は「蔡氏は市民団体の招待」としているが、中国はやはり「『台湾独立』の分離主義行為」とみなして平行線だ。
中国によるレアアース輸出規制問題に半導体問題。中国とEU・ドイツの関係が緊迫する要素は次から次へと起こっている。
しかし、両者の関係が緊迫すると、なぜ台湾問題まで同時に緊張が高まるのだろう。
台湾とリトアニアの連帯がEUとドイツを動かす
大本をたどれば、バルト3国の一つであるリトアニアが2023年、首都ヴィリニュスに「台湾代表事務所」の開設許可を出したことに始まる。
問題は「台湾」という名称を使うことだ。日本も含めて、台湾を正式な国家として承認していない国では「台北」という言葉が使われる。東京にある台湾の機構は「台北駐日経済文化代表処」である。ちなみに欧州で台湾を正式に認めているのは、バチカン市国だけである。
ウクライナ戦争が起こり、リトアニアはまたロシアによって独立を奪われるのではという脅威にさらされた。それゆえ、独裁的で権威主義的な大国に逆らう「小さな民主国家の同志」として台湾を応援したのだ。
リトアニアの措置に怒った中国は、同国との関係を格下げしただけではなく、経済制裁を加えた。
さらに中国は、EUの他の国々にまで「リトアニア製の部品を使えば中国市場を失う」と脅しをかけ始めた。これが「欧州単一市場を脅しで分断しようとしている」、いわば「EUの主権に脅迫をかけてきた」と、かえってヨーロッパ人を怒らせ、中国への不信感をつのらせた。
この時、中国に大きく経済依存していた経済大国ドイツの反応は、EU内で大変重要な意味をもった。
主要新聞の社説や雑誌は、これは経済的脅迫であり、欧州として断固たる姿勢を取るべきで、中国への依存を減らすことを主張した。複数の世論調査で、中国を「パートナー」と考える人々の割合は落ち込み、「ライバル」「競争相手」と捉えたり、否定的な見解をもったりする人々が約7割にのぼった。
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