コラム

EU、結束阻むハンガリー「封じ」に本腰...親露貫くオルバン政権に波乱の予感

2025年04月16日(水)12時15分

すでにハンガリーには、相次ぐ法の支配の侵害から、63億ユーロ(約1兆300億円)の凍結が決定されている。2024年末までに割り当てられるはずだった10億4000万ユーロ(約1700億円)を確実に失った。「さらなる金融制裁をハンガリーに」と主張する人たちもいる。

2010年にオルバン氏が政権に復帰して以来、法の支配への違反は次々と起こってきた。欧州委員会は、欧州司法裁判所に訴えを起こすための手続きを行っていて、進行中のものもあれば、完了したばかりのものもあると、Toute l'Europeは報告している。そのような流れの中で、このメカニズムはつくられた。

コロナ禍の経済的ショックに対処するための「復興計画」からの資金等を含めると、合計で約190億ユーロ(約3兆1000億円)もの給付がブロックされているという。

ロシアの凍結資産、約2000億ユーロ

そして「最後の手段」とされているのが、各国が独自に措置を講じることだ。

ロシア制裁は半年おきに更新しなくてはならない。今年の1月にはかろうじて更新されたが、次の7月には、またハンガリーが拒否権を使うと脅迫してくるのではないかと、EUの国々は疑心暗鬼になっている。

『ル・モンド』によれば、特にベルギーは行動を起こすことができるという。なぜなら、欧州にある凍結されたロシア資産、約2000億ユーロ(約33兆円)の大半は、ベルギーに拠点を置く国際決済機関「ユーロクリア」が管理しているからだ。その場合、ベルギーはパートナー国に、経済、金融、法律上のリスクを分担するよう求めることになるだろうという。

さらに欧州委員会は、中国の電気自動車メーカー比亜迪(BYD)が、ハンガリーで電気自動車を組み立てるために、違法な中国の補助金を受け取ったとされる件の調査開始を検討しているという。中国はハンガリーの主要投資国の一つである。ちなみにハンガリーの経済は、ドイツの自動車下請け産業に依存しているという専門家の指摘がある。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア中銀、追加利下げ余地ある=総裁

ビジネス

大・中規模企業の借り入れ需要改善幅、3年ぶり大きさ

ビジネス

NTT、4ー9月期の営業収益が過去最高更新 法人ビ

ビジネス

仏トタルエナジーズCEO、中国需要減速でも原油価格
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story