コラム

タリバン、国際資金枯渇の危機:米ドルで三重苦 アフガニスタンの財源は?

2021年08月30日(月)19時40分

国連のアヘン調査によると、この20年間でケシの栽培量は増加しており、2020年には前年比37%増となっている(ただし、アヘンの価格は下落しているとも言われている)。

需要が高いと言われる強力な麻薬であるメタンフェタミン(覚せい剤の一つ)の生産による収入も近年増加しており、今では国内のアヘンの生産量に匹敵するとも言われている。

アフガニスタンの中央高地に自生するエフェドラ(麻黄)という植物が、覚せい剤の生産に使われるケースが増えていると、昨年末に欧州麻薬・薬物中毒監視センターが発表した。

タリバンは麻薬の収穫量に課税しているが、取引にどのくらい積極的に関与しているかの度合いについては、アナリストの間でも議論がある。

アナリストのシェイク氏は、「確かに麻薬は、彼らの戦争活動の主な資金源でした。でも、一つの国家を運営するには、全然十分な額ではありません」と言う。

ケシ農家から主にタリバンが得ている収益は、2019年には1450万ドル(約16億円)とみられると、国連薬物犯罪事務所(UNODC)は6月、国連安全保障理事会でと報告した。

アヘンの製造や密売から得る収益を含めると、アフガニスタンの国内総生産の11%になると推計したという

17日、タリバンの広報官であるザビフラ・ムジャヒッド氏は、記者会見で、麻薬を排除して「経済を復興させたい」と主張した。

「アフガニスタンは今後、麻薬のない国になりますが、国際的な支援が必要です。国際社会は、我々が代替作物を持てるように支援すべきです」と語った。

金塊はどこに?

アフマディ氏によると、タリバンはアフガン中銀の従業員に、国の貯蔵金の場所を教えてくれと言っていた。

しかし、カブールにあるアフガン中銀の金庫に残っているのは、わずかな通貨や金の在庫だけだという。

「タリバンが利用できる資金は、準備金の0.1%か0.2%程度でしょう。あまり多くはありません」と氏は言う。

さらに興味深いことを、アフガン中銀の顧問を務めたコーツ氏は言った。「大統領官邸の金庫にも金塊があります」。

毎日新聞の報道によると、逃亡したガニ大統領は、4台の車に現金を大量に積み込んで空港に逃れたと、ロシア通信が報じたという。

ヘリコプターに積み替えたがすべては入りきらず、一部は滑走路に残したまま飛び立ったそうだ。積み込んだ中に、金塊はあったのだろうか。

人道援助の今後

アナリストのシェイク氏は、開発援助と、人道支援とは切り離すべきだと考えている。

明らかに人々は、緊急の人道支援を必要とするだろう。「寄付の問題と混同しないよう、国連が人道的な道筋を設けることができるのではないでしょうか」。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出合い、EUが変えゆく世界、平等と自由。社会・文化・国際関係等を中心に執筆。ソルボンヌ大学(Paris 3)大学院国際関係・ヨーロッパ研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。編著に「ニッポンの評判 世界17カ国最新レポート」(新潮社)、欧州の章編著に「世界が感嘆する日本人~海外メディアが報じた大震災後のニッポン」「世界で広がる脱原発」(宝島社)、連載「マリアンヌ時評」(フランス・ニュースダイジェスト)等。フランス政府組織で通訳。早稲田大学哲学科卒。出版社の編集者出身。 仏英語翻訳。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮

ワールド

トランプ氏誕生日に軍事パレード、6月14日 陸軍2

ワールド

トランプ氏、ハーバード大の免税資格剥奪を再表明 民
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単に作れる...カギを握る「2時間」の使い方
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 9
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 10
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story