コラム

仏ル・モンド紙が指摘した東京五輪「変異株の祭典」、「鉄の癒着三角形」とは

2021年05月12日(水)12時54分

フランスの「ル・モンド」の考察は鋭いが、やや「パリ・オリンピックは2024年。運の良い人たちは何とでも言える」と、いじけた感想をもたないでもない。

ただ彼らは、もし自国の開催が2020年だったとしても、この程度の批判は書くに違いない。

問題は、批判を目立って表に出さない、日本のメディアのあり方だと思う。大声で批判「的」なことを言っているとしたら、カネ勘定くらいのものだ。まるで原発だ。

実は、上述の中野教授は、2020年にニューヨーク・タイムズ紙に、日本政府の無能を指摘する記事を寄稿しているという。

2月26日付で「日本はコロナウイルスに対処できない。五輪が開催できるのか?」と題して寄稿。「日本政府の新型コロナウイルスへの対応は驚くほど無能だ」と指摘。「厚生労働省は、感染が疑われる場合に、公的医療機関に連絡する時期や方法について、2月17日になるまで国民に知らせなかった」などと論じたという

これに対し、外務省の大鷹正人外務報道官が、3月に入ってから、同紙に反論を掲載した。「日本政府の新型コロナウイルスとの戦いについての描写はアンフェアだ」と主張。「日本政府は、日本で最初の感染症例が確認された1月15日より前から、国民に注意を呼びかけ、水際対策のための積極的措置を講じた」と述べているという。

さらに今年2021年の3月25日付で、中野教授は再び「ニューヨーク・タイムズ」紙に寄稿している。題して「オリンピックは開催させる。でもなぜ?(The Olympics Are On! But Why?)」。

これがまた淡々とメッタ切りなのだが、ここでは「鉄の三角形」は、「菅首相は、自民党、総務省、メディア業界という、日本政治の鉄の三角形の中で支配的な人物である」と描写されている。つまり、経済界が、メディア業界に置き換わっているバージョンとなっている。

ここで紹介するつもりだったが、長くなりすぎるので、次の稿に「つづく」としたい。

つづきの記事:日本人教授がNYタイムズで糾弾した、菅政権とメディアの癒着。何が書かれていたか。読者の反応は。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら


プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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