コラム

中国にロシア...「お墨付き」与える国々が加速させるタリバンの「復讐殺人」

2022年05月17日(火)17時21分

5月には女性に対し公共の場でのブルカ(顔を含む全身を覆い隠す長衣)の着用が義務付けられ、必要不可欠な場合以外は家にいるよう勧告された。「イスラム法に従い男性を挑発するのを避けるため」だとされる。タリバン政権にはもちろん1人の女性もいない。ここまで女性差別を徹底している国は世界で唯一無二である。

タリバンが任命した国連代表スハイル・シャヒーンは4月、米政府の海外向け放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し、既に約10カ国がタリバンの外交官を受け入れていると述べた。イラン駐在アフガニスタン大使のように、タリバン政権に追認された人物もいる。シャヒーンは、あらゆる国がタリバン政権を承認しなければならないと主張した。

タリバン政権と外交関係を結ぶ国が増えるほど、タリバン支配下の女性やマイノリティーの差別や迫害といった問題が改善される可能性は失われる。矢継ぎ早に繰り出される女性差別政策は、タリバンが「このままでいいのだ」と自信を深めていることの証しだ。ウクライナに軍事侵攻し民間人の虐殺を続けるロシアが、まさにその最中にタリバンの外交官を承認したことは「人権についてとやかく言わない国」同士の連帯を象徴する。

世界の注目がウクライナに集まるなか、タリバン政権はひそかに、そして着実に、外交的勝利を収めつつある。

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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