コラム

民主主義をむしばむ「ハイブリッド脅威」──今そこにある見えない戦争

2025年07月25日(金)12時28分

権威主義にとって有利な「時間」

民主主義の弱体化は長らく指摘されている課題である。近年、多くの民主主義国の政治家が「偽・誤情報は民主主義の脅威である」と口にするようになった。我が国の政治家も例外ではない。偽・誤情報が脅威に映るのは、社会そのものに脆弱性が存在するためで、偽・誤情報をモグラ叩きのように否定していても問題は解決しない。

しかし、民主主義国においては、問題に対処するためには手続きや議論を経る必要があり、制度改革が即座に行われることは少ない。加えて、人権などに対する配慮も求められる。一方で、権威主義国家は迅速な意思決定が可能であり、柔軟に対応できる。この非対称性がある以上、民主主義は常に劣勢に立たされる。


「時間」は民主主義にとって不利に、権威主義にとって有利に働く。同じコストをかけても、民主主義は遅れを取りやすい。したがって、民主主義が対抗するには、より多くのリソースを投入し、戦略的に備えることが求められる。「同等に戦うためには、相手よりはるかに多くのリソースを投入しなければいけない」という現実を直視しなければならないのである。

さもなければ常に後手に回り、じりじりと後退し、国内の反主流派によって民主主義を失うことになる。アメリカはそうなった。EUもその道を進みつつある。我が国は欧米を轍をたどることが多かったが、いまそれを行うのは民主主義を捨てることに等しい。

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プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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