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民主主義をむしばむ「ハイブリッド脅威」──今そこにある見えない戦争
権威主義にとって有利な「時間」
民主主義の弱体化は長らく指摘されている課題である。近年、多くの民主主義国の政治家が「偽・誤情報は民主主義の脅威である」と口にするようになった。我が国の政治家も例外ではない。偽・誤情報が脅威に映るのは、社会そのものに脆弱性が存在するためで、偽・誤情報をモグラ叩きのように否定していても問題は解決しない。
しかし、民主主義国においては、問題に対処するためには手続きや議論を経る必要があり、制度改革が即座に行われることは少ない。加えて、人権などに対する配慮も求められる。一方で、権威主義国家は迅速な意思決定が可能であり、柔軟に対応できる。この非対称性がある以上、民主主義は常に劣勢に立たされる。
「時間」は民主主義にとって不利に、権威主義にとって有利に働く。同じコストをかけても、民主主義は遅れを取りやすい。したがって、民主主義が対抗するには、より多くのリソースを投入し、戦略的に備えることが求められる。「同等に戦うためには、相手よりはるかに多くのリソースを投入しなければいけない」という現実を直視しなければならないのである。
さもなければ常に後手に回り、じりじりと後退し、国内の反主流派によって民主主義を失うことになる。アメリカはそうなった。EUもその道を進みつつある。我が国は欧米を轍をたどることが多かったが、いまそれを行うのは民主主義を捨てることに等しい。
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