最新記事
シャーマニズム

アヤワスカが「観光ビジネス」になるまで...「ヒーリング」か「搾取」か? 霊薬に群がる現代人の欲望とは

2025年7月27日(日)10時00分
ハチュマク(シャーマン)
アヤワスカ

PERU-AYAHUASCA/ REUTERS/Enrique Castro-Mendivil (PERU)

<偽シャーマンにご用心。シャーマン自らが語る、ジャングルに広がる「スピリチュアルビジネス」の実態について>

世界中から大きな注目を集める神聖な植物と儀式、シャーマンの世界観、シャーマニズムがもてはやされることの問題...。シャーマン自らが語った話題書『目に見えない世界の旅 ペルーのシャーマンが語る聖なる植物の癒やし』(作品社)の「第8章 シャーマンによる施術の暗部」を一部編集・抜粋。


◇ ◇ ◇

アヤワスカツーリズムの起源は、1950年代から60年代にさかのぼる。娯楽目的の薬物使用が欧米社会のあらゆる方面に浸透しはじめ、世界中の旅行者が新たなエキゾチック体験を求めてアメリカ国境以南の国々を訪れるようになった時代だ。

アレン・ギンズバーグやウィリアム・バロウズといったビートジェネレーションの作家たちは、アヤワスカ、マジックマッシュルーム、サボテンを摂取し、その体験について熱く語った書簡を互いに送り合った。

1970年代になると、アメリカ国内でペヨーテやシロシビンなどの物質への需要が劇的に増加し、カルロス・カスタネダが呪術師ドン・ファンを題材として書いた一連の著作がベストセラーリストの常連となる中、「シャーマニズム」は一般の人々の間で注目度の高いワードとなっていった。

近年、アヤワスカの薬効に関するニュースがメディアやインターネットを通じて広まったことをきっかけに、世界中から何万人もの人々が治癒を求めて中南米の熱帯雨林地域を訪れている。そして当然ながら、

先進国が抱える諸問題から解放されたいと願う裕福な外国人が発展途上国に押し寄せれば、そこには例外なく、詐欺師や不当な利益を得ようとする者たちが集まってくる。

貧困から抜け出す手段を見出した何千人もの農民や村人たちが、現在、先祖代々受け継いできた土地を離れてにぎやかなアマゾンの街に移り住み、大量生産されたペルーの「工芸品」を販売している。

同時に、シャーマニズムの儀式を専門とするロッジやホテルが、アマゾン地域の都市や、ジャングルの小さな街に続々と建設され、裕福な外国人に高額な「儀式体験付きの休暇」を提供している。

科学
地震の正体は足元の「その先」に──深海から探る、地震発生のメカニズム
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

タイとカンボジア、停戦協議の即時開催に合意 トラン

ワールド

タイとカンボジアの衝突続く、トランプ氏が停戦呼びか

ワールド

韓国、対米通商交渉で相互に合意可能な協定案準備 大

ビジネス

中国工業部門利益、6月は前年比4.3%減 マイナス
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:山に挑む
特集:山に挑む
2025年7月29日号(7/23発売)

野外のロッククライミングから屋内のボルダリングまで、心と身体に健康をもたらすクライミングが世界的に大ブーム

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 2
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 3
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や流域住民への影響は?下流国との外交問題必至
  • 4
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    運転席で「客がハンドル操作」...カリフォルニア州、…
  • 9
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「電力消費量」が多い国はどこ?
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 5
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 6
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 7
    「カロリーを減らせば痩せる」は間違いだった...減量…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中