コラム

トランプ政権がもくろむCIAの大リストラ、次に起きることは?

2025年02月26日(水)14時50分

トランプ政権が目指す「単一行政理論」が背景に

まず、いま共和党内で主流になっている一派は過去数十年にわたり、連邦政府の規模を半分に縮小すべきだと訴え続けてきた。差し当たりは、新規採用の凍結などの措置も含めて、連邦政府の職員数を100万人減らす方向らしい。

トランプと共和党は、「ディープステートの解体」も主張している。一枚岩の官僚機構「ディープステート」が水面下で暗躍し、人民に害を及ぼしていると思い込んでいるのだ。CIAの人員削減により、ディープステートに打撃を与えられると考えているようだ。


しかし、ディープステートという考え方は、もともとはファシズムの支柱を成す概念だ。1人のリーダーに権力を集中させなければ、傲慢な官僚機構の搾取から人民を守ることはできないと考える。このような発想は全体主義的で、民主主義の土台を揺るがす。

CIA職員の大量削減には、合衆国憲法に最も忠誠を誓うキャリア職員を放逐し、大統領に最も忠誠を誓う人たちに差し替えることにより、CIAを大統領の意のままに利用できる道具にする狙いもある。

共和党の活動家とトランプは、アメリカを三権分立の国ではなく、大統領がほぼ全ての権力を握る独裁的な国家に転換させたいと考えている。この「単一行政理論」は、20世紀ドイツの法学者カール・シュミットが発展させたものだ。シュミットは民主主義への敵意を示し、ナチス・ドイツの「桂冠法学者」とも呼ばれている人物である。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米・ウクライナ、鉱物資源協定に署名 復興投資基金設

ワールド

サウジ、産油政策転換示唆 「原油安の長期化に対応可

ワールド

米長官、印・パキスタンに緊張緩和要請 カシミール襲

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株の底堅さ好感 大手ハ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story