コラム

ロシアが負ければ、プーチンの自国至上主義は「歴史のごみ箱行き」になる

2022年10月13日(木)16時35分
国連

国連はロシアのウクライナ侵攻を繰り返し非難しているが(今年3月、ニューヨーク) BRENDAN MCDERMID-REUTERS

<ロシアとウクライナ、勝つのはどちらか? 戦争が終わったとき、どんな新国際秩序が生まれるのか。2つの「戦後」シナリオを検証する>

ウクライナの高機動ロケット砲システムとロシアの旧ソ連製戦車が、そしてウクライナの東部と南部で殺し合っている数十万人のウクライナ兵とロシア兵が、ウクライナの運命を決めようとしている。

現時点ではウクライナが主導権を握り、数千平方キロの領土をロシアの侵略者から解放しつつある。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の思惑とは反対に、ウクライナが独立国家として生き残り、西側の経済・政治機構に完全に統合されることは、ほぼ確実のようだ。

戦争がどのような形で終わったとしても、ロシアが世界の経済大国から敬遠され続けることは間違いないだろう。ウクライナの荒廃した領土、衰えたロシア政権、萎縮するロシア社会と経済。それがロシアの侵略の果実となる。

ただし、ロシアがいつ、どのように国際社会に復帰するのか、そもそも復帰するかどうかは、ロシア政権の今後の在り方によって、さらにはウクライナと、主にアメリカが、どのような平和を受け入れるかによって決まる。

戦争終結後は2つのシナリオが考えられる。

1つは、過去80年間、規範となってきた国際秩序が強化され、ロシア政権の帝国的かつ直情的な反欧米の性質が根本的に変わること。

もう1つは、世界が純粋に国力に基づいて2つの勢力圏に分断され、対立することだ。その場合、世界の政治的統合と経済成長は著しく遅れるだろう。

プーチンは独立した国と文化としてのウクライナを消し去るため、そしてロシアの政治、経済、文化の支配から飛び出して西に接近することを阻止するために侵攻した。しかし、より大きな戦略的目標は、第2次大戦後の規範的な国際秩序を覆すことだ。

プーチンから見れば、その秩序は覇権帝国アメリカの二枚舌であり、彼らはそれを道具にロシアの文化や権力、さらにはプーチン自身を滅ぼそうとしている。

プーチンのこうした世界観は、特異なものではない。北はヘルシンキから西のベルリン、中欧のキーウ(キエフ)、南の(アルメニアの首都)エレバンなどロシア人以外の人々は、東から襲いかかるロシアの大熊を必死にかわしながら、自分たちを見下す退廃した西側に憤慨してきた数百年の歴史を抱えている。

ロシアの自国至上主義に限界

ウクライナがロシア軍のキーウ占領の試みを退けると、ジョー・バイデン米大統領は長期的な対ロシア政策について、新しい時代を開く決断を下したようだ。

すなわち、アメリカはウクライナ戦争を利用して、ロシアが他国を侵略したり、規範的な国際秩序を崩壊させたりする能力を破壊することを目指していく。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、ブレア英元首相やクシュナー氏らとガ

ワールド

ロシア、NATOのウクライナ駐留に反発 欧州の安保

ワールド

ガザ南部病院攻撃でハマス構成員6人死亡、米が安保理

ビジネス

米百貨店コールズ、通期利益見通し引き上げ 株価は一
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に侵入してきたクマが見せた「目を疑う行動」にネット戦慄
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 5
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 6
    「1日1万歩」より効く!? 海外SNSで話題、日本発・新…
  • 7
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 10
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story